院長・スタッフのコラム

2015年12月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その55

Q:歯茎が腫れてしまったので、氷で冷やしていい?
A:△ ガンガンに冷やすのはよくありません。腫れがひかなくなります。

歯茎が熱をもって腫れているときは、冷やすと楽になりそうな気がします。感覚がなくなるくらい、腫れの芯までガンガンに冷やすと、痛みは少しは和らぐかもしれません。しかしこの行為は後の治療には悪影響を及ぼすことが多いのです。その理由は以下のようです。

腫れている部分というのは、体自体が細菌をやっつけようとしていて、血流が増えています。そこを氷でガンガンに冷やしてしまうと、血管が収縮して血流が滞り硬くなってしまいます。

そして、硬くなってしまった部分には、メスをいれても膿が出ないので、内圧が下がらず腫れたままで痛みが引きません。切開しても痛いだけで終わるのです。また、血流が悪くなっているので、抗生剤を飲んでも患部に届きにくく、薬効が正常に発揮されません。

臨床的に歯茎が膿をもって腫れるときの2大原因は、1)歯周病の急性増悪 、 2)歯根の先端が膿んでくる根尖病巣の増悪です。

各々腫れる位置が微妙に異なり、1)は歯茎の縁が、2)は歯根の先端に近い部分が腫れます。

2)の原因は主に虫歯が極度に進行し、歯髄がすべて死んでしまい腐敗したり、抜髄処置が不良で膿んだりする場合などです。これらは感染源が異なるので自ずと治療法が異なり、原因を確定することが重要になります。

腫れて膿んでいる時に切開するのは痛みの症状を軽減するだけで、それだけで根本的に原疾患が治癒するものではないのです。

もし、腫れが勝手に引いたからといって、そのままにするのは良くありませんし、ましてや自分でついて膿を出すだけというのも対処療法にすぎません。きちんと診察を受け、原因だけでも調べておくべきでしょう。

次回のQは・・・・
「治療の途中でいれてもらった仮歯がけっこう気にいったから、このままでいいよね?」です。

<院長>

2015年11月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その54

Q:歯ブラシ一本でお口の中全体をキレイにできますか?
A:× 歯ブラシ一本では全体をキレイにすることはできません。フロスでなければお掃除ができない、歯ブラシの届かない場所が実はあるのです。

私はデンタルケアが好きで、時間があるときは20分くらい洗面所にいることがあります。歯ブラシはもちろんのこと、歯間ブラシやプラウト、電動歯ブラシ、最近ではエアフロスも購入し、あれやこれやとデンタルケアを楽しんでいます。

こんな私ですが、最近奥歯と奥歯の間にゴマ粒半くらいの黒い虫歯があるのを見つけてしまいました。

「毎日欠かさず歯間ブラシを通して歯磨きしているのに!!どうしてー?!!」

そんなときにたまたま読んだ参考書に答えが書いてありました。私の虫歯ができた場所は歯と歯の隣り合った面(隣接面)のもっとも狭くなっているところ(コンタクトポイ ント)でした。

このコンタクトポイントは、歯ブラシも歯間ブラシも届かず、歯と歯がきっちり接しているので上から器具を通過させないかぎりお掃除ができないというのです。

フロス

まさかと思い、フロスを使ってみると、まだこんなにも残っていたのかというくらい汚れが絡め取れたではないですか。驚きと同時に感動が湧くくらい、気持ちよく汚れが取れすっきりしました。こんなに汚れが残っているなんて!虫歯になるのも納得です。

私の盲点だった歯と歯の隣接面は意外と面積が広く、虫歯の多発箇所!お口トラブルの温床だったのです。

院長や衛生士さんに言わせれば、当たり前のことかもしれませんが、知らない人の方が多いのではないかと思います。また、フロスを使いこなすには少々コツがいり、私もデンタルケアが好きと言いつつ、フロスだけを敬遠してきたのには使い方が難しいという点があったからです。そのコツというのはフロスをのこぎりのように小刻みに動かして入れ、隣接面のカーブに軽く沿わせたまま引き上げることです。

歯磨きをキッチリしているのに虫歯になってしまうと悩んでおられる方、一度フロスを使ったお掃除をされてみてはいかがでしょう。

また、鳥居歯科医院ではプロフェッショナルな歯磨き指導も行っておりますので、どうぞお気軽にお電話ください。

次回のQは・・・・
「歯茎が腫れてきたので、氷で冷やしていい?」です。

<受付 岡 まどか>

2015年10月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その53

Q:災害時避難所などでできる効果的な歯磨きはありますか?
A:○ あります。

最近は地震や水害などの大きな災害が増えてきています。そのような時、急いで避難しなくてはならなくなり、必要なものだけを持って避難してしまうことが多いのではないでしょうか。歯ブラシなどお口のケア用品までは、なかなか手が回りません。

避難所で出される食事は一般的に炭水化物が主になり、その中の糖分により歯垢も付きやすくなります。また、口腔内の清掃が不備になった場合、高齢者は誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。

このことからしても、避難所での口腔衛生の大切さは言うまでもありません。

次に歯ブラシがない場合、水が不足している場合のお口のケアを紹介します。

歯ブラシがなくとも簡易ですが、お口ケアができます。

歯ブラシがないときは食後に30ml程度のお水やお茶で数回しっかりとうがいをします。

また、ハンカチやガーゼを指に巻いて歯の表面を拭って、汚れを取るのも少しは効果があります。ただこの方法では歯と歯茎の境目や歯と歯の隣り合った面はきれいにならないので、ハンカチやガーゼの中で爪を立てて狭い部分を擦ると少しはましでしょう。

歯ブラシはあるが、使えるお水が少ない時の歯磨きとしては

  1. 30ml程度のお水をコップに入れます。
  2. コップの中のお水で歯ブラシを濡らして、歯磨きを開始します。
  3. 歯ブラシが汚れてきたら、ティッシュペーパーやウェットティッシュで歯ブラシに付いた汚れを拭き取ります。歯磨きと拭き取りを繰り返します。
  4. 最後に残ったコップの水で口をすすぎます。うがいは1回で終わるのではなく、グチュグチュと2~3回に分けるのが効果的です。うがい薬などを使用するとよりいいでしょう。

ハンカチやガーゼよりもしっかりと歯磨きをして頂く方が歯の衛生にとってはいいので、避難時に家から持ち出す非常食などと合わせて歯ブラシも入れておきましょう。

次回のQは・・・・
「歯ブラシ一本でお口の中全体をキレイにできますか?」です。

<歯科衛生士 神田和美>

2015年9月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その52

Q:入れ歯は歯磨き粉を付けて磨いていいのよね?
A:× 研磨剤が入っている歯磨き粉では磨いてはいけません。

歯磨き粉を使って入れ歯を磨かれている方はいらっしゃいませんか?

入れ歯は、口の中に入れるものなので、歯と同じようにきれいにしようと歯磨き粉で磨いていらっしゃる方が多いかもしれませんね。

歯磨き粉の中にはリン酸水素カルシウムや炭酸カルシウムなどの研磨剤が入っています。以前より歯磨き粉の研磨性は低くなり歯が削れないようになってきていますが、入れ歯の レジン床(しょう)人工歯は人の歯より柔らかいため、歯磨き粉を使って入れ歯を長期間磨いていると傷がつくのです。

そのため、以前から入れ歯は歯磨き粉を付けず、流水下で入れ歯専用のブラシを使って磨くことが推奨されています。

また研磨剤の入っている歯磨き粉を使って入れ歯を磨くと、表面に細かい傷がつき、光沢が失われ、その傷にバクテリアが繁殖し、不潔になるといわれています。

最近では、研磨剤を含まない泡タイプの入れ歯洗浄剤も市販されています。

入れ歯を傷つけず、化学的な洗浄も期待できるので、衛生的にはこういった入れ歯専用の洗浄剤を使用することが望ましいと考えられます。

今、使用している歯磨き粉が研磨剤入りかどうかの判断は、歯磨き粉の成分表示の欄を見てください。もし、「研磨剤」と書かれていた場合は、その歯磨き粉は研磨剤入りですので、入れ歯には使用しないでください。

次回のQは・・・・
「災害時避難所などでできる歯磨きはありますか?」です。

<歯科衛生士 小川綾加>

2015年8月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その51

Q:詰め物が取れたとき、自分で瞬間接着剤でつけていいの?
A:× ダメです。 医療用ではない材料を人の体に関して使用するのは、安全性が確認されていないのでお勧めできません。

市販の瞬間接着剤は、医療用としては作られていないので、体に関わる場所への使用については安全性が確認されていません。もし口腔内で使用すると、刺激が強いため神経のある歯の場合では、神経が死んでしまう危険性があります。また自分ではっきり見えないような部位に、正確に元に戻して接着するのは、至難の業であり、歯茎や唇に瞬間接着剤が付いてしまうことも。そうなったら大変です。仮に付いたとしても、元の位置からずれて付いてしまうと、来院されてからの処置が煩雑になるので、絶対にしないで下さい。

ところで歯科用のセメントは充填、仮着け、合着などその用途は多岐にわたっています。なかでも合着、接着用のセメントはどんどん進歩し新しい製品が発売され、外れにくくなってきました。しかし口腔内は、1)24時間唾液に浸っている、2)食事時や歯ぎしりの咬合により強い力が加わる、3)アイスのような氷点下から熱いお茶のような激しい温度変化 などの過酷な環境にあります。 一生涯 詰めた物が取れませんと言えるセメントは今のところありません。

被せや詰め物が取れるときというのは、単にセメントが破壊されたり、溶けたりしただけではなく、虫歯が再発して取れている場合があります。いずれの場合でも、取れたものを一応お持ちになって、なるべく早くご来院下さい。定期検診では、新たな虫歯だけでなく治療済の歯にも問題がないかのチェックもしています。

次回のQは・・・・
「入れ歯は歯磨き粉をつけて磨いていいのよね?」です。

<院長>

2015年7月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その50

Q:睡眠が浅いと歯ぎしりしやすいって本当ですか?
A:○ 歯ぎしりの発生原因はいまだ解明されていませんが、どんなときにブラキシズムが起きるかは明らかになっています。それは眠りが浅くなったときです。

健やかな眠りには段階があります。まず レム睡眠から始まり、浅い ノンレム睡眠に入り徐々に眠りが深くなって深いノンレム睡眠が現れます。その後、眠りがぐっと浅くなり、またレム睡眠に戻ります。この1時間半位のサイクルが一晩に4~5回繰り返されています。

そして、ブラキシズムが発生するのは、眠りの浅いレム睡眠と浅いノンレム睡眠のときなのです。

そう言われれば、私も夢うつつに、ギシギシと音を立てて歯ぎしりをしていたのを覚えています。リビングのソファーでうたた寝をしていたときに家族から「何その音!?」と起こされたこともありました。

目がしっかり覚めているときにあの音をもう一度出そうとして歯を磨り合わせてみても、これ以上強くすると歯が折れるんじゃないか?とブレーキがかかるためギシギシと音を出すことはできませんでした。

つまり睡眠中は無意識にそれだけ強い力が歯や顎にかかっているということです。そして、そのことにより、ご自身の大切な歯を失ったり、治療が長持ちしないなどのお口のトラブルが起き易いといえます(ウソホントシリーズ46で紹介)。

話を戻しますと、眠りの浅い状態が続く人は、それだけブラキシズムの発生率を高めているということになります。例えば、いびきをよくかく、タバコを吸っている、ストレスや不安がある、寝酒をするなど眠りの質を落とす原因はいろいろありますが、これらに当てはまる方は眠りが浅い可能性が高いと思われます。裏を返せば、上記の原因を自覚し、改善することによって、深く健やかな眠りでブラキシズムを減らすことができるということです。

私は十代の頃は、寝る前に一日を振り返り、失敗したことをクヨクヨ悩んだりして寝つきが悪かったのですが、社会人になり、疲れ果ててクヨクヨする間もなく寝るようになってからは、以前より歯ぎしりが減ったように思います。また自分にピッタリ合った枕を見つけたことにより、いっそう健やかな眠りに出会えたと実感しています。

みなさんもご自分に合った眠りの質を改善する方法を探されてみてはいかがでしょうか。

また、マウスピースの併用で、歯ぎしりや噛みしめによって発生する力を分散させ、健康な歯に及ぶ被害を最小にすることについては、鳥居歯科へご相談ください。

次回のQは・・・・
「詰め物が取れたので自分で瞬間接着剤でつけていいの?」です。

<受付 岡 まどか>

2015年6月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その49

Q:部分入れ歯の支えになっている歯が、ほかの歯より早く抜けるって聞いたけど本当?
A:○ 早く抜けることもあります。

皆さんの中には入れ歯を使われている方がいらっしゃると思います。またご自分の歯に入れ歯のバネ(クラスプ)をひっかけて支え(鉤歯)とした部分入れ歯を使われている方も多くおられるでしょう。

鉤歯には、その歯自体で咬むときの力だけでなく、入れ歯の 人工歯で咬んだときの動きも伝わるため、大きな力がかかることになります。さらに入れ歯をはずすときは、毎回クラスプが歯を抜く方向に鉤歯をひっぱっているのです。入れ歯をいれると、このように鉤歯の負担が増え、また入れ歯の下の粘膜やその下の顎の骨もやせるので、入れ歯はそれらを犠牲にして成り立っているものと言えます。

なかにはクラスプをかけた歯が抜けるたびに、人工歯を足していき、ついには総義歯になってしまったという方もおられます。

また、鉤歯には入れ歯のクラスプや レストなどが接するので、普通の歯よりも汚れが付きやすくなります。そのため、歯周病や虫歯になりやすく、それが原因で早く抜けてしまうことがあります。

このように歯が早く抜けてしまう最大の原因は、鉤歯の汚れであり、適切に作られた入れ歯なら「噛む力」による負担よりも、「歯周病」や「虫歯」の方が問題であるという研究もあります。

まずは、今ある歯を大切にして、できるだけ入れ歯にならないようにするのが第一です。

たとえ、もし入れ歯になったとしても、定期的に歯のお掃除をし、お口の中を清潔に保つことで長期にわたり、良い状態で入れ歯を使用することが出来ます。

次回のQは・・・・
「睡眠が浅いと歯ぎしりしやすいって本当ですか?」です。

<歯科衛生士 神田和美>

2015年5月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その48

Q:入れ歯は寝る時には外しておいた方がいいの?
A:○ 寝る時に入れ歯を付けたままだと残っている歯の歯肉炎、義歯性口内炎の発生が増加するという報告があります。基本的には入れ歯は外して寝てください。

入れ歯を使われている方は夜寝る時はどうされていますか?

外されている方がほとんどだと思います。なかには入れ歯は夜間もはめておくように指導される歯科医もおられますが、基本的には寝る時は入れ歯を外して頂いております。

なぜなら、寝ている時にも入れ歯をはめていた人については、残っている歯の歯肉炎、義歯性口内炎の発生が報告されているからです。

知らずに入れ歯をはめっぱなしにしている方の粘膜は、大抵真っ赤になり段がついて、入れ歯の形にへこんでしまっています。入れ歯の下の粘膜の回復のためにも、夜寝る時は入れ歯を外し、また入れ歯の変形を避けるために容器に入れ歯が浸るまでお水を入れて保管して下さい。その時に、入れ歯をブラシで磨いた後、入れ歯洗浄剤も一緒に使用して頂くとより清潔になります。

ただし、例外的に夜間に入れ歯を入れて頂く場合があります。

  1. 歯ぎしりによって残っている歯に過剰な負担がかかる場合
  2. 残っている歯によって粘膜が傷つく場合
  3. 顎関節に過剰な負担がかかる場合
  4. グラグラしている歯を入れ歯で固定している場合

などが挙げられます。このような場合、昼間の数時間は入れ歯を外して、粘膜を休ませてください。

いずれの場合もご自身で判断せず、歯科医師と相談してみてください。

次回のQは・・・・
「入れ歯の支えになっている歯が早く抜けるって聞いたけど本当?」です。

<歯科衛生士 小川綾加>

2015年4月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その47

Q:仮歯が入って調子がいいのでもう通院しなくてもいいですか?
A:× それは絶対にやめてください。

本コラム2月号でお話しましたように、歯を削ったときに仮歯を入れる理由は1)見た目 2)しみるのを予防する 3)歯の移動を防ぐ 4)周囲の歯茎が伸びるのを防ぐ などです。

実際にはその場で製作、調整しやすいように、柔らかい材質のレジンを使います。また、仮付けにして後にはずす必要があるので、仮付け用の一番柔らかいセメントで装着します。

仮歯は短ければ、型を取って1週間位使用するだけです。もし前歯が抜けて格好が悪い場合、抜歯してすぐに仮歯を入れても3か月ぐらいしか使いません。まれに、全部の歯にわたるような大きなケースでは1年ぐらい使用する場合もありますが、途中で再製や修理をします。仮歯は、その名の通り仮の歯であって、長期間の使用に耐えるものではないのです。

では、このような仮歯を長期間つけたままにしておくとどうなるでしょうか。

仮付けのセメントは軟らかいので、徐々に溶けて流れてしまい、できた隙間から虫歯になります。

もし仮歯が脱落してしまえば、仕方なく来院されるのかもしれませんが、脱落がなく仮歯をそのまま使っておられると柔らかい材質なので、徐々にすり減ってきます。すり減った厚み分だけ咬合面(こうごうめん)に咬み合う相手の歯との間に隙間ができるかというとそうではなく、上下の歯はぴったり咬み合っています。つまり減った厚さ分、歯が移動したというわけです。

さらに仮歯に穴があくまですり減ってしまった場合は、当然本物の被せにも穴があくまで削らなくては入らないわけですから再製しなければなりません。もちろんその費用は患者さんにかかってきます。健康保険上は未来院の場合、製作物は6カ月位は保管するようになっていますが、その後は廃棄処分となります。

遅れても6カ月より前に来院されれば、一応入るかどうかトライしてみますが、調整にはすごく時間がかかり、またせっかく技工士さんが作ってくれて完成している技工物(被せ)を形がなくなるくらい削り、その挙句、穴があくと一から作り直さなけれはなりません。

このように非常に無駄なことになるのです。全国民から徴収して成り立っている大切な健康保険の財源を無駄に使ったことにもなるので、仮歯が入ればご予約通り必ず最後まで治療にお越しください。

次回のQは・・・・
「入れ歯は寝るときはずしておいた方がいいの?」です。

<院長>

2015年3月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その46

Q:歯並びが悪いと歯ぎしりをするって本当ですか?
A:△ 残念ながら、現在歯ぎしりの原因は解明されたわけではありません。歯並びが悪くて歯ぎしりをされているケースもありますが、そう多くはありません。むしろ歯並びが良く上下の歯できっちり咬めている方に歯ぎしりはよく見られます。

ブラキシズムにより過剰な力が習慣的に加わると、歯(特に奥歯)が欠ける、折れる、被せ物が壊れる、顎が痛い、頭痛がするなどのお口のみならず、健康を脅かす重大なトラブルが起きやすくなってしまいます。

私は小さい頃から睡眠時ブラキシズムがひどく、そのせいか日中も歯の根元あたりに違和感があり、指で歯をグッと押すなどして、気持ち悪さを紛らわしていました。また、歯並びも悪かったので、見かねた両親が歯列矯正に行かせてくれました。歯がきれいに並んでからは、すっかり歯ぎしりがなくなり、違和感もなくなったので、やっぱり歯並びが悪かったせいで歯ぎしりをしていたのだと最近まで思っていたのですが、とりい歯科に勤め始め、歯ぎしりと歯並びはさほど関係が無いことを知り驚きました。

参考書を調べてみますと以前から「ブラキシズムの原因はストレスであろう」と言われているそうです。それら二つはある程度の相関がありますが、あまりストレスが強いと逆に歯ぎしりが少なくなることもあります。現在、睡眠時ブラキシズムが起きる理由については、まだ解明されていないそうです。医院へ歯ぎしりでかかられている患者さんを見ていると大方の方は歯並びが良く上下の歯できっちりと咬んでおられるようです。歯並びが悪いから必ずブラキシズムが起こるということはなさそうです。

矯正が終わり、最近はお口のトラブルらしき症状も出ていないので、歯ぎしりはしていないと思っていますが、何せ睡眠中のことですから本当に歯ぎしりがなくなったのか疑念は残ります。

とりい歯科でも歯ぎしり対策のマウスピースをご用意しています。装着された患者様から、顎関節痛や頭痛の悩みから解放されたと喜びの声を頂くこともしばしばです。

私の場合、ブラキシズムに気づくことができたので、歯や顎の被害は小さく済んでいる様に思います。

日頃から歯を大切にしているのに、お口のトラブルで悩まれている方は、一度ブラキシズムを疑ってみてはいかがでしょうか。

次回のQは・・・・
「仮歯が入って調子がいいのでもう通院しなくてもいいですか?」です。

<受付 岡まどか>

2015年2月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その45

Q:歯を削ったとき仮歯を入れてくれるけど、待ち時間が長くなるのが嫌なんです・・・仮歯っているんですか?
A:× 仮歯は必要なのです。

虫歯が大きくなり被せの治療が必要になったとき、歯を削った後、ふつう仮歯をいれます。歯を削った日にその場ですぐ仮歯を作るので、少し時間がかかりお待たせすることになります。全体として治療時間が長くなり患者さんは大変だとは思うのですが、この仮歯は大切なものなのです。

削ったままだと見た目が悪いから仮歯を入れると、思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、それだけではないのです。もし神経がある歯を麻酔して削り、その後麻酔がきれると歯がしみるかもしれないので、これを防ぐために仮歯をいれます。

また、上下の歯の咬み合っている面(咬合面)や隣どうしの歯の接している面(隣接面)を削ったままで仮歯を入れない場合、それらの歯が伸びたり傾いたりします。つまり削る前の歯のスペースを仮歯で確保するわけです。

歯茎に近い部分(歯頚部)も削るのですが、仮歯を入れずにそのままだと歯茎が削った縁を覆うように盛り上がってきてしまうので、作った被せがうまく入らないなんてことも起こります。そうすると、新しい被せの調整に時間がかかってしまいます。

このような理由で仮歯は必要なのです。

仮歯は柔らかいセメントで仮着けをします。新しい被せを入れるときに簡単にはずれるようにするために完全にはくっつけたりはしません。ですから、新しい被せが出来るまでの間に外れてしまうことがあるかもしれません。

もし、外れてしまったら歯科医院まで連絡して頂いて、付け直しをさせて下さい。

外れたままにはしないようにして下さいね。簡単に再製はできないので、はずれた仮歯は絶対捨てないでお持ちください。

次回のQは・・・・
「歯並びが悪いと歯ぎしりをするって本当ですか?」です。

<歯科衛生士 神田和美>

2015年1月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その44

Q:虫歯に詰め物をしてもらったのにしみるのは、虫歯が残っているの?
A:× 少し深い虫歯で、象牙質まで削った歯は神経組織の末端もいっしょに削っているので、特に冷たいものがしみる場合があります。しかしほとんど自然に症状が治まるので、しばらく様子をみましょう。

少し深い虫歯や黒いだけで痛くなかった虫歯を削って詰めてもらったときに、治療後冷たいものがしみたり、強くかむと痛いなどの症状が出た経験はありませんか。このような場合ほとんど自然に症状が消えることが多いのです。

どれくらいで治まるかはケースバイケースですが、早ければ2~3週間、長ければ数カ月かかるときもあります。一旦治まっていたのに水が冷たくなるとまたしみるようになることもあります。しかし、ほとんどの場合症状はなくなるのですが、これは痛みに慣れてしまうのではありません。そのわけをご理解いただくためには、象牙質の構造をご説明する必要があります。

図1図1

象牙質はプラスティックのように無構造でべったりしたものではありません。図1で示すように中心に神経から延びる細長い組織が通った硬い細いチューブがぎっしり寄り合わさったような構造になっています。

虫歯の治療をするときは、確実に悪い部分を取り除くために、黒く腐って軟化した象牙質だけでなく、その下のまだ感染していない硬い象牙質まで少し削る必要があります。そうすると切削面にもろに神経の一部が露出した状態になってしまい、治療後にしみることになります。

ではその後徐々に痛みが引いていくのはどういうわけでしょうか。

マイルドな刺激が伝わり続けると、歯は刺激を遮るために、神経の周りに象牙質を新しく厚く作っていきます。その結果、詰め物と神経との距離が長くなり、痛みやしみるなどの症状が落ち着いてきます。この新しくできた象牙質を二次象牙質とよび、生体の防御機構のひとつです。この現象は象牙質の直下、歯髄の最表層に生きた象牙質を作る細胞が後退しながら新たに象牙質を形成していくことで起こります。

虫歯の治療時以外にも加齢や磨耗・咬耗などが起こるときにも同様の現象がみられます。

図2図2

治療後しみると「なぜ神経を取ってくれなかったか。」と思われる場合があるかもしれませんが、「もう少し様子をみましょう。」というのは以上のような理由からで生体の防御反応を待っているのです。様子を見ているうちに症状が消える場合がほとんどで、神経を取る治療をしなくてもよくなります。

神経を取る治療は、完璧に成功させるのは非常に困難で、神経を取ると歯がもろく、割れやすくなり耐久性が落ちる欠点があります。できる限り、神経を保存しご自身の歯を長く使い続けるために、治療後様子を見ていただければと思います。

次回のQは・・・・
「歯を削ったとき仮歯を入れてくれるけど、待ち時間が長くなるのが嫌なんです・・・仮歯っているんですか?」です。

<院長>

あけましておめでとうございます
本年も当コラムをお読みいただきありがとうございます。
引き続きご愛読賜りますようよろしくお願い申しあげます。

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