2020年12月号
長期に喫煙していると、全身的には各種臓器に障害を起こし、いろいろな疾患を生じやすくなります。特にがん、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)は喫煙による影響が大きく、喫煙関連三大疾患と呼ばれています。
一方口腔に関して喫煙は、口腔がんと因果関係があり、また歯周病にも深く関連しています。
喫煙による歯面へのヤニの付着や歯肉へのメラニン色素沈着など見た目の問題だけでなく、喫煙者特有の病的な歯周病所見がいくつか見られます。
まずニコチンの血管収縮作用により歯肉への血流量が減少するため、炎症を起こしているにもかかわらず歯肉出血が減少します。それは歯周検査時にも出血が少なく、さらに歯肉のメラニン色素沈着もあるため炎症症状がわかりにくくなります。また歯肉出血が少ないことは病気の発症や進行の自覚をも遅らせることになるのです。
また、実際は重症化していても歯肉の発赤、腫脹が軽度なため、見落とされ、重度の歯周炎が増加することになります。
さらに、ニコチンにより歯肉辺縁部が硬くなり線維性の肥厚が起こります。ブヨブヨの出血しやすい歯肉もよくありませんが、硬い潤いのない歯肉もよくありません。というのは歯周病治療をしても硬すぎて歯肉が引き締まりにくく、歯周ポケットが浅くならないからです。また、歯肉が硬いため歯周ポケット内部で化膿しても、外に腫れが出にくいので発見が遅れます。
喫煙と歯周組織の破壊については、喫煙者は歯肉出血が少ないわりに歯周ポケットが深く、歯槽骨の吸収が大きく重症になりやすいことがわかっています。またプラーク、歯石の沈着量と病態が一致せず、沈着量が少ないにもかかわらず病状が進んでいる場合があります。歯周病と関連して歯の喪失は、喫煙本数が多くなるほど、喫煙年数が長くなるほど、リスクが高くなる傾向が報告されています。
このように喫煙は歯周組織にとって良くないことばかりです。喫煙されている方は、いち早く禁煙をしていただくのがベストなのですが、なかなかそう簡単にできるものではないのかもしれません。ところで今、豊中市では「外出不要!人との対面接触不要のオンライン卒煙プログラム」を推し進めています。ご興味のある方は一度「豊中 卒煙」で検索してみてください。
次回のQは・・・・
「妊娠してから歯ぐきが腫れやすくなり、歯磨きをすると出血します。大丈夫でしょうか?」です。
院長
2020年11月号
「妊娠後に歯が悪くなってしまった。」というお話を聞いたことはありませんか?実は妊婦さんが虫歯になりやすいというのは本当のことです。ただしその原因は、よく言われる「カルシウムを赤ちゃんに取られてしまうから」ではありません。それが本当なら妊婦さんは骨折しやすくなってしまいますが、そういうことはありませんね。妊婦さんならではの事情によるお口の中の変化が深く関わっているのです。
では、お口のトラブルを起こしやすくなる変化についてみていきましょう。
このように普段よりも虫歯になりやすくなる妊婦さんのお口。これはだれでも、妊娠により自然に起きる変化です。
ぜひ歯科検診を受け、プロのサポートを得て大切な歯を守っていきましょう。
次回のQは・・・・
「タバコは歯周病の原因ですか?」です。
歯科助手 西川 理恵
2020年10月号
唾液にはたくさんの役割があり、お口の健康にも全身の健康にも欠かせないものだということは本年6月号のコラムでお話しさせていただきました。今回は唾液の量と質についてお話ししましょう。
ここで問題です。唾液は1日にどのくらい作られていると思いますか?健康な成人の場合1日に約1000~1500ml、なんと500ml入りのペットボトル2~3本分も作られているのです。唾液の量が減る主な原因としては、まずは加齢。加齢にともない唾液腺の機能やお口の筋力が低下し、唾液の量が減少してしまいます。そして、持病のために服用している薬剤の副作用、また唾液腺の病気やがんの放射線治療でも減少します。
それでは、唾液が少ない、減ってきた、もっと唾液を出したいというときには、どうすればいいのでしょうか?唾液の量を増やすコツをお教えします。
唾液の「量」の次は、「質」も意識してみましょう。唾液の質を左右するのは唾液中のIgA(免疫グロブリンA)の量です。この物質が増えると感染予防に役立ち、唾液の質もよくなるといえます。IgAの量をアップさせるコツは、腸の免疫力をアップさせることです。腸と唾液、一見無関係に思えますが、「腸の免疫の状態と唾液腺の免疫の状態は連動する」ことが分かってきています。腸の免疫状態の改善には、腸内の細菌叢のバランスを改善する食品、具体的には生きた菌を含む食品(乳製品)や食物繊維が豊富な食品を継続して摂取することが必要です。食物繊維を含む食品は、腸内の細菌が繊維を代謝(分解)しやすいようによく噛んで食べましょう。
つまり、質の良い唾液をたくさん出すために大切なことは、「噛めるお口」を維持することです。噛めない・噛みづらいなどのお悩みがある方や、現在とくにトラブルを感じていない方も、お口の健康維持のために定期的な歯科受診をお勧めします。
次回のQは・・・・
「妊娠すると歯が悪くなる」と言われるけれど、もともと虫歯が少ないし歯科検診には行かなくても大丈夫ですよね?」です。
歯科助手 福永沙織
2020年9月号
歯並びが悪くなる原因はいろいろ考えられます。
歯の生え替わり時期のお子さんの場合、顎の大きさが小さいため、歯が正常に生えるスペースが十分に取れず歯が重なりあって生えてしまう遺伝的な要因以外にも、舌や唇の力の影響も見過ごせません。舌や唇が一回に及ぼす力は強くありませんが、頻回、長時間歯に力がかかっていると、硬い顎の骨の中に植わっている歯でも徐々に移動します。そして、口の外方向への舌の力と内方向への唇の力が釣り合うところに歯は並びます。
無意識に身につけてしまった舌や唇の癖が、だんだん歯並びを悪くしてしまう可能性もあるのです。
無意識に身につけてしまいがちな癖とは?
こうした癖は歯にかかる舌と唇の力のバランスを崩し、そのため歯並びによくない影響を与えることがあるのです。
では、歯並びが悪いと見た目が悪い以外にどのようなことが起こるのでしょう?
・虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まる
歯並びが悪いと歯ブラシが隅々まで届きにくいので磨き残しが多くなり、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。また、歯垢や食べかすなどお口の中にたまりやすいことから細菌が増殖しやすくなり、口臭が強くなる傾向があります。
・発音が悪くなる
言葉を発するには舌の位置が重要です。歯並びが悪いと舌がうまく動かず発音が悪くなってしまうこともあります。
・しっかり噛み合わない歯がでてくる
噛み合わない歯があると、他の歯に噛む力がかかり過ぎる
・ドライマウスになる
歯が出ていて口が閉じていないと、いつも口の中が乾いてしまいます。これがドライマウスです。口の中が乾燥すると唾液が行きわたらず菌が繁殖し虫歯、歯周病や口臭の原因になります。さらに喉も乾いてしまうので、風邪などのウイルスが体内に入りやすくなります。
もしお子さんに上記のような癖があるのなら、それがほかのことに影響してしまう前に注意してあげることが大切です。生活面での予防策ももちろんですが、まだ乳歯の時期から定期的に歯科検診を受けることで、自分では気づかなかった悪い習慣を見つけるきっかけになるかもしれません。
次回のQは・・・・
「最近唾液の量が減ってきた気がするのですが、問題ないですか?」です。
歯科助手 西川理恵
2020年8月号
低フォスファターゼ症とは、骨や歯を作るアルカリフォスファターゼという酵素の不足のために起きる病気で、骨や歯の成長が不十分なため、骨折、歯が抜けやすくなるなどの難病に指定されています。原因は体内で酵素を作る遺伝子が変異して酵素が十分に作れないことにあります。こうした変異遺伝子がたまたまお子さんに受け継がれて低フォスファターゼ症が発症します。日本では世界に先駆けて「酵素の補充」という根本療法が受けられ、治療が可能になっています。
低フォスファターゼ症には症状の強さに違いがあります。重症型の場合、妊娠中に肋骨がうまく育たなかったりすると早期に診断がつくので、見逃されることなく酵素の補充治療が行われます。しかし軽症型で日常生活にさしつかえないと、それが病気の影響だとは気づかれずに、治療の機会を逃してしまうケースがあるのです。そうした「隠れ低フォスファターゼ症」を発見する鍵となるのが乳歯の早期脱落です。
健康な歯は歯根膜という靱帯が歯根の外側のセメント質と顎の骨をしっかり固定しているので、よほどのケガや重度の歯周病でないと抜けません。しかし低ホスファターゼ症のお子さんの場合、歯根膜やセメント質が弱く、しっかりと固定されていないために抜けやすいのです。なかでも歯根が細い前歯が抜けやすく、乳歯が早く抜けると成長が早いと喜ばれそうですが、4歳以前ではさすがに早すぎます。
そこで「4歳以前に乳歯が抜けたりグラグラしているときは小児歯科を受診しましょう!」と注意喚起されています。その際、必ず抜けた歯は持参しましょう。正常に生え替わると歯根が溶けて残っていないはずなのですが、この病気で抜けた歯には歯根の先まで残っていることが特徴的です。慣れた小児歯科医なら「生え替わりで抜けたのではなさそうだ」と気づきます。
低フォスファターゼ症は進行性の病気で、初期に目立った症状がなくても、成長とともに全身に症状が出てくることもあります。乳歯が早く抜けたことがきっかけで病気が見つかっていれば、その時点で治療の必要がなくても経過観察を受けておくことで、将来進行したときにすぐ治療が始められます。
もしも病気に気付かないまま大人になり、間違って骨粗鬆症だと診断され、ビスホスホネートなどの骨の代謝を止めるお薬を処方されてしまうと、逆の作用で低ホスファターゼ症が悪化しかねません。そのためにも、軽症型を早期発見することがとても大切なのです。
次回のQは・・・・
「歯並びに舌と唇は影響しますか?」です。
歯科衛生士 小川綾加
2020年7月号
上下の歯は食べたり話したりするときに瞬間的に合わさるだけです。ですから、一日の接触時間をトータルしてもわずか20分以下にしかなりません。ところが、仕事をしているとき、考え事をしているときなど習慣的に上下の歯を合わせたままになっている方が少なからずいらっしゃいます。この癖をTCH(Tooth Contacting Habit)と呼びます。
実際に私自身については、歯科の専門学校で「上下の歯は離れているもの」と習ってから意識してみると、なんと考え事をしているときに無意識に歯と歯が合わさっていると気付き驚きました。
では、この癖がお口の健康にいかに過酷なリスクを与えているかについてお話しします。
歯と歯が当たっているだけでこのようなリスクがあるとは、びっくりですよね。
もしご自分にこの癖があると気が付いたら、常に意識して歯と歯を離してリラックスしてみましょう。
そして、そのことを絶えず思い出すために、よく目がつくところに「歯を離す」と書いたメモを貼る方法がおすすめです。
次回のQは・・・・
「子供の歯が3歳でぬけました。乳歯なので問題ないですよね?」です。
歯科衛生士 佐野 成美
2020年6月号
唾液というとあるのが当たり前で特に気にとめない存在ですよね。むしろ、ネバネバしていてなんとなく汚いもののようなイメージがあるかと思います。でも実は唾液にはたくさんの役割がありお口の健康にも全身の健康にも欠かせません。まずは唾液とは何者なのかお話します。
唾液は透明の液体なので水分が姿を変えたものだと思っている方もいるかもしれませんが、実は唾液はもともと血液なのです。血液が唾液腺において唾液へと作りかえられます。唾液が作られる唾液腺はお口の中に多数存在し、大きさにより「大唾液腺」と「小唾液腺」とに分けられます。耳の下の「耳下腺」、顎の下の「顎下腺」、舌の下の「舌下腺」、この3つが3大唾液腺と呼ばれ左右で計6個あり、たくさんの唾液を作り出します。小唾液腺は頬、唇などの粘膜に多数存在します。唾液の99%以上は水分ですが残りの1%にさまざまな成分が含まれています。ここでは、お口や体に有益なものにしぼってご紹介します。
唾液がただの水分ではなく、たくさんの役割があり非常に高性能な機能水であることがお分かりいただけたでしょうか?
日頃から、水分をしっかり取り、よく噛んでたべるなど、大切な唾液の分泌を促しましょう。
次回のQは・・・・
「口を閉じているときって歯と歯は離れていますか?」です。
歯科助手 福永沙織
2020年5月号
口や歯のけがは交通事故、喧嘩、格闘技、コンタクトスポーツや球技などでも起こります。歯が脱落してしまった時、とっさの対応により歯を救える場合があります。ちょっと覚えておいていただくと、いざというときに役に立つことがあるかも知れません。
外傷時まずは全身的なチェック(頭部,四肢などの外傷の有無、意識の状態など)を行い、それらがなく歯の問題だけの時はできるだけ早く歯科や口腔外科を受診してください。抜けた歯が再び生着するかどうかは歯根膜が元気かどうかにかかっており、次の3つのポイントが大切です。
その時抜けた歯を保存するには以下の方法があります。
では万が一歯が抜けてしまったらどうするか
歯科医院での処置は
なお歯以外の症状が優先され、再植が後回しになるときでも歯をできるだけよい状態で保存し、再植にトライしてみるのがいいかと思います。ただし歯周病でぐらぐらの歯は元々歯根膜の状態が良くないので、抜けてしまって再植してもまず生着の可能性は低いでしょう。
抜けたままだと両隣の歯を削ってブリッジにしたり、入れ歯にしたりする必要があるので、抜けた歯がそのまま生かせる歯牙再植術は非常にメリットの多い治療法と言えます。
次回のQは・・・・
「唾液って食べ物を飲み込みやすくする以外にも働きがあるって本当?」です。
院長
2020年4月号
今般、新型コロナの影響で東京オリンピック開催の可否が話題になっていますが、今回はそのオリンピックの主役であるアスリートのお口の中のお話です。アスリートは、がっしりしたガタイと真っ白な歯のイメージがありますが、実はアスリートは虫歯になりやすい、ということをご存知でしたか?トップアスリートだけでなく、学校の部活やスポーツジムで練習に励んでいる方、日常的にランニングをしている方にとっても無縁ではありません。ある種目の日本代表選手は平均すると一般人より未処置の虫歯、処置済みの歯数がともに多いという研究結果があります。
では、どうして虫歯になりやすいのでしょうか、原因は主に以下の6つです。
スポーツに打ち込んでいる人ほど虫歯や酸蝕症のリスクが高いため、お口の健康管理が重要なのです。バランスよく栄養を摂り、トレーニングの疲労を回復させ、よいコンディションを維持するにはお口の健康は不可欠であり、全身の健康管理の基盤です。
お口の健康を守るには、まず「知ること」です。皆さんもぜひアスリート特有のリスクを知って、歯を大切にしていきましょう。
次回のQは・・・・
「事故で歯が抜けちゃった。元通りにくっつくってほんとう?」です。
歯科助手 西川理恵
2020年3月号
お口の中のお悩みの代表格、口臭。スメハラなんて言葉が定着するくらい、お口のにおいは気になるものです。口臭というと、「歯はいつも磨いているから、胃腸が悪いせいかな?」とお口以外の原因を思い浮かべがちですが、ほとんどの口臭の原因は実はお口の中にあります。歯周病や虫歯、舌の汚れが原因となっていることが多いです。お口のなかの細菌のうち、とくに歯周病原菌などの酸素を嫌う菌(嫌気性菌)が、腐敗臭をともなうにおい物質を発生させます。彼らが唾液や血液、剥がれ落ちたお口の粘膜、食べかすに存在するたんぱく質(正確には含硫アミノ酸)を分解したときに、揮発性の硫黄化合物―硫化水素(卵が腐ったようなにおい)、メチルメルカプタン(玉ねぎが腐ったようなにおい)、ジメチルサルファイド(生ごみのようなにおい)などを出すのです。
毎日しっかり歯みがきをしているという人でも、意外に忘れていることが多いのが舌のお掃除。舌の汚れである舌苔は、口臭の原因でも最たるものです。舌苔は、読んで字のごとく舌の表面を苔のように覆っている汚れです。舌の表面は一見、平坦のようですが、じつは非常に微細なひだが無数に存在していて、足の長い絨毯のような構造になっています。この肉の絨毯に新陳代謝ではがれたお口の粘膜の細胞(つまりは老廃物ですね)や細菌が付着します。そしてそれがべっとりと分厚い層になったものが舌苔なのです。
舌苔のお掃除には舌専用のクリーナーがおすすめです。舌を傷つけないよう、力を入れずに表面をなぞるように10回くらい動かします。口臭専用の歯磨きペーストを使用するのも効果があります。舌はデリケートですので、磨きすぎにはご注意を。磨きすぎて出血すると血のにおいがまた口臭になります。30回以上擦ると出血するといわれています。舌に傷ができるとそこから腫瘍ができる危険性もあります。たとえば、磨かずに単にミント味のブレスケア製品を摂取したとしても、においをマスクするだけなので、根本的な解決にはなりません。ただ、ガムは噛んでいるうちに唾液が出て、お口の中の老廃物や舌苔も少しは洗い流されますので、そういった意味では良いかもしれません。その際は虫歯にならないようにキシリトールのガムを選ぶと良いですね。しかし、口臭に関しては、キシリトールガムがいいのか砂糖入りガムかというのはちょっと込み入った問題があるので、2006年2月号のコラムをご覧ください。
人にはなかなか相談しにくい口臭ですが、鳥居歯科では口臭測定器による口臭検査も行っていますので一人で悩まずにお気軽にご相談くださいね。
次回のQは・・・・
「アスリートは虫歯になりやすい?」です。
歯科衛生士 小川綾加
2020年2月号
糖尿病とは血液中のブドウ糖が余り慢性的に血糖値が上がってしまう病気です。インスリンというホルモンが、細胞にブドウ糖を届ける働きをしているのですが、このインスリンが不足したり働きが悪くなるために、血液中のブドウ糖が細胞にうまく届かず、血液中にブドウ糖が余ってしまうのです。
症状は、しきりに喉が渇く、多食、多尿、全身の倦怠感、体重の減少などがあります。また、血糖値のコントロールがうまくできていないと免疫細胞の働きが低下してしまうため、感染への抵抗力が低くなってしまい細菌感染が起きやすくなったり、血流が悪くなって傷の治りが悪くなってしまいます。
歯周病も細菌感染によって起こる病気ですから、糖尿病の方は歯周病になりやすいうえその進行も早く、治りにくいことがわかっています。糖尿病と歯周病はとても密接な関係にあり、歯周病は糖尿病の合併症のひとつでもあるのです。さらに最近になって、糖尿病と歯周病にはもっと深い関係があることが徐々に分かってきています。近年の研究では歯周病になると血糖値のコントロールを邪魔する毒素が出ることが分かってきました。つまり歯周病にかかると、血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病を悪化させている可能性があるというのです。どうやら歯周病と糖尿病はお互いに悪さをしあっているようです。実際に歯周病を患っている糖尿病の患者さんが歯周病の治療をしたら、「血糖値が下がった」という研究結果も報告されています。
ですからあきらめることはありません。血糖値のコントロールをしながら歯周病にならないように、効果的にリスクを回避していきましょう。歯周病を予防するために大切なのは、まず毎日の歯磨きです。もうひとつ、とても大切なのが定期的に歯科医院で歯科検診を受けることです。糖尿病の方は歯茎に炎症が起きやすいだけに歯周ポケットもできやすく、深くなりがちです。歯周ポケットの奥深くに硬くこびりついてしまっては、歯ブラシ一本でお掃除しようとしても残念ながら取り除くことは不可能です。そのためプロの技術が必要になるのです。
歯科医院で歯周ポケットの奥まできれいにしてもらい、歯垢や歯石をしっかりと取り除いて治療して、歯茎と体の健康を維持しましょう。
次回のQは・・・・
「口臭の原因になる舌苔は歯ブラシでゴシゴシこすれば落ちますか?」です。
歯科衛生士 佐野 成美
2020年1月号
〈1位〉歯 〈2位〉目〈3位〉腰
突然ですが、こちらは何のランキングだと思いますか?実はこれ、シニア世代に聞いた「40代のうちからメンテナンスをしておくべきだった身体の部位」ランキングなのです。なんと過半数以上の方が「歯」と答えていて、メンテナンスしておけばよかったと後悔されています。仕事や学校、家事や育児でどうしても後回しになりがちな歯のこと。悪くなったら歯医者に行って治療すればいいと思っていませんか?治療を終え、またしばらくしたら別の歯が痛くなった、歯茎が炎症を起こした、なんてことを繰り返していませんか?お口の環境を改善して病気の原因を減らさないと新たなトラブルと治療の繰り返しになります。
虫歯を治療すると虫歯が治った!と安心してしまうかもしれませんが、詰め物や被せ物は失った部分を補っただけで、元通りになったわけではありません。前々回のコラムでもお話ししていますが、一度治療した歯は健全な歯に比べて虫歯になりやすいのです。また歯周病も進行すると歯を支えている骨が溶けて失われ、治療をしてもなかなか元に戻りません。歯周ポケットもいったん深くなると、歯ブラシの届かない奥の方に歯石やプラークがたまって炎症が再発し重篤になりやすいです。だからこそ定期的メンテナンスで予防することが大切です。
メンテナンスの効果はというと、日本人の平均では40代から60代で歯の本数が急勾配で減っていくのに対し、メンテナンスを続けている方は勾配がなだらかで歯の喪失が少なくなっています。メンテナンスを継続している方の場合、8020運動(80歳で20本の歯を残す)の達成はそれほど難しいことではないことが分かります。実際、長年当院でメンテナンスに通われている患者さんが昨年8020を達成し、受賞されてとても喜んでいらっしゃいました。
具体的にメンテナンスではどんなことをするのかというと、当院では
①歯やお口のことで気になることはないか、体調や日常生活にお変わりはないか問診します。
②歯ぐきの炎症の有無(細い器具で歯周ポケットの深さや出血を調べます)、歯がグラグラしていないかを調べます。
③口腔内カメラを使って、どこに磨き残しがあるか、着色がないかなどを患者さんご自身の目で確認していただきます。
④歯についたプラークや、歯周ポケットの奥に入り込み歯ブラシでは取れないプラーク、歯石、着色などをきれいににお掃除します。
⑤最後に歯科衛生士がチェックした項目と合わせて歯科医師が診察します。
虫歯も歯周病も知らないうちに少しずつ進んでいく病気です。痛い!と気づいた時には手遅れになっている場合も多々あります。早めに気づいて対策をとるため、歯科医院での定期的なメンテナンスをはじめましょう。
次回のQは・・・・
「糖尿病と歯周病が関係深いってホント?」です。
歯科助手 福永沙織
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