院長・スタッフのコラム

2021年4月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その119

Q:タバコは歯周病に悪いということですが、新型タバコは大丈夫ですよね?
A:× 紙巻タバコより少ないとはいえ有害物質を多く含むので全身にも、口腔にも悪い影響を与えます。

新型タバコとは、従来の燃焼式の紙巻タバコ以外の新しいタバコ製品とタバコ類似製品の総称であり、「加熱式タバコ」と「電子タバコ」に大別されます。加熱式タバコは、たばこの葉を電気で加熱し、発生する蒸気を吸引するタイプで、アイコスやプルームテックなどがこれに該当します。一方電子タバコは、液体を電気的に加熱して発生させた目に見えない煙(エアロゾル)を吸引するもので、葉タバコを原料としないのでタバコ類似品です。

新型タバコは目に見える煙が出ませんが、加熱に使うのが火なのか電気なのかが異なるだけでタバコであることに違いはありません。依存性の強いニコチンやニトロソアミン、アルデヒド類などの発がん物質、循環器・呼吸器疾患の危険性を高めるさまざまな有害物質が、量はやや少ないものの含まれています。発売されてまだ数年しか経っていないので長期的な健康への影響を評価するデータはまだ十分ではありませんが、紙巻きたばこより害が少ないという確実な医学的根拠はありません。また「煙が出ないから受動喫煙で迷惑をかけない」というのは誤解で喫煙者が吐き出す息には多くの有害物質が含まれ周囲の空気を汚染し、受動喫煙を発生させます。従って公共の場、公共交通機関での使用は認められていません。

日本で使用者が多い加熱式タバコの口腔への影響については、まだほとんど研究されていませんが、含まれるニコチンは口腔に何らかの影響を与えると推測されています。
電子タバコについては、紙巻きタバコと同様に吸わない人より歯周病になりやすいことがわかっています。また、試験管内の研究では、電子タバコエアロゾル曝露によりミュータンス菌の歯面への付着力が増加します。さらに電子タバコ使用者には口腔乾燥症やニコチン性口内炎、口角炎などが高頻度にみられます。

紙巻きタバコからの禁煙のため加熱式タバコを使用しようとする喫煙者がおられるようですが、その切り替えによる禁煙効果は明らかにされていません。全身的にも口腔内の健康にも悪影響を及ぼす喫煙。禁煙には、市販の禁煙補助薬の使用や禁煙外来の受診をお勧めします。

次回のQは・・・・
「入れ歯ができてから気を付けることはありますか?」です。

院長

2021年3月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その118

Q:歯周病だとウイルス感染しやすい?
A:〇 最近の研究では、歯周病菌の出す毒素がウイルスの細胞への侵入を容易にするばかりか、ウイルスのパワーを増強することが分かってきています。

ウイルス感染から身を守るための有効な手段は、マスクの装着・手洗い・うがい・そして栄養と休息などの体調管理ですね。これらに加え、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために現在強く推し進められているのが「3密(密閉空間、密集場所、密接場所)」を避ける工夫です。そしてもうひとつ、ウイルスに対する防御力を上げる方法として、みなさんにぜひお勧めしたい方法があります。それは「ていねいな歯みがき」です。なぜ歯みがきなのと思われるかもしれませんね。

100年前のスペイン風邪のパンデミック下にアメリカで行われた調査によりますと、歯周病の人のスペイン風邪の罹患率は歯周病でない人の2倍以上でした。当時はなぜこのような大きな違いが出るのかわかりませんでした。しかし現在の研究では、危険なウイルスが体内に入り込む際に「歯周病菌がその手引きをしている」ことが明らかになってきています。

コロナウイルス、インフルエンザウイルスなどのウイルスはみな、生きた細胞に入り込まないと生きられず、ノドの粘膜細胞のレセプター(細胞の膜にあるウイルスの入口)に吸着すると、スルリと内部に侵入し、自分の遺伝子を細胞のなかに放り込みます。そして乗っ取った細胞のタンパク質やエネルギーを使って、自分の遺伝子を増殖させていくのです。しかし通常ノドなどの粘膜の細胞は、粘液で覆われて隠れており、ウイルスが細胞のレセプターに吸着しようとしても、なかなか吸着できません。この機を逃さずガラガラうがいをすれば、ウイルスを追い出すことができます。「外から帰ったら必ずうがいをしましょう」というのは、こういう理由からです。ところがこの粘液による防御作用が弱くなってしまう場合があります。そこに関わっているのが、思わぬ伏兵、歯周病菌なのです。

お口の中に歯周病菌がたくさんいると、歯周病菌の出す毒素が粘液の層を溶かして壊します。するとウイルスの標的である粘膜細胞のレセプターが露出し、吸着が容易になってしまいます。つまり歯周病菌は、ウイルスが素早く体内へ侵入できるように手引きをしてしまうのです。さらに、歯周病菌の出す毒素は、ウイルスのもつ「細胞の入口を開ける鍵」をパワーアップさせてしまうこともわかっています。こうした歯周病菌の凶悪さは、インフルエンザウイルスの研究によって解明されたものです。コロナウイルスも、細胞のレセプターに吸着し侵入する点で共通することから、同様に「歯周病菌の手引きを受けている」とみて間違いないでしょう。

歯みがきを怠ってプラークが溜まったり、歯周病菌の巣になった歯石を放置したりしていると、歯周病になってしまいます。コロナから身を守るには、マスク・手洗い・うがい・体調管理と3密を避けることに加え、「ていねいな歯磨きをしてふだんからお口の中を清潔にし歯周病を予防すること」と覚えておきましょう!

次回のQは・・・・
「タバコは歯周病に悪いということですが、新型タバコは大丈夫ですよね?」です。

歯科衛生士 小川綾加

2021年2月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その117

Q:インプラントを入れた後、メンテナンスが大事ってほんと?
A:〇 とても大事です。痛みや違和感がなくてもメンテナンスに通院するのが長持ちさせるために不可欠です。

インプラントは被せから歯根に当たる部分まで、完全なる人工物ですのでインプラント自体は細菌に強いです。もちろん虫歯になることはありません。しかし、インプラントが埋まっている周りの歯茎は別で,天然歯(普通の歯)と同じように歯周病(インプラント周囲炎)になる恐れがあります。

インプラントと天然歯との違いの1つは「歯茎の繊維のバリアがない」ことです。
天然歯では周囲の歯茎の内部に繊維が伸びていて、歯と密接に絡みついています。これは、歯と歯茎の付着を強化するほか、体内への細菌の侵入を防ぐバリアの役割も担います。いわば歯の首に当たる部分をぎゅっと絞めている感じです。歯を失うと、この繊維も一緒に失われます。そのためインプラント周囲の歯茎は細菌に弱く、「歯周病」になりやすいのです。

もう一つの違いは歯根膜の有無です。天然歯は歯根と歯槽骨が薄い線維で強固に結ばれており、噛む力に対してクッションになっています。ところがインプラントには歯根膜がなく歯槽骨に直に結合しているので、過剰な力がかかると歯槽骨にトラブルが起こります。

天然歯に起こる歯周病と、インプラントに起こる歯周病。どちらも犯人が歯周病菌なのは変わりません。歯周病は、歯の根元周りに付着した細菌がまず歯茎に炎症を起こし、腫れや出血が現れます。いわゆる「歯肉炎」ですね。これが悪化するとあごの骨が溶けてなくなり(実際は体の防御反応で吸収されている)「歯周炎」となります。
インプラントの歯周病も進行の仕方は似ています。インプラントに付着した歯垢がそのまわりの歯茎に腫れや出血を起こします。これは「インプラント周囲粘膜炎」とよばれセルフケアの見直しや簡単な治療で元に戻ります。しかし悪化すると,歯槽骨にも炎症が及ぶインプラントの歯周炎=「インプラント周囲炎」となります。周囲炎が進むと骨が失われて、インプラントは抜けてしまうこともあります。

インプラントを入れた後、忙しかったり痛みや違和感がなかったりするとメンテナンスをお休みしてもいいかな?と考えてしまう方も残念ながら少なくありません。
ですが、患者さんが異常を感じてから来院されても対応が難しいことが多いです。早い段階で発見できれば元に戻せますし、インプラントを失わずにすむ可能性が高まります。そのためにも定期メンテナンスには欠かさずご来院下さいね。

以上、インプラントを入れたのちのメンテナンスの重要性をお話ししましたが、もし、歯が抜けた原因が歯周病なら、まず歯周病を治してからインプラント治療をすることをお勧めします。

次回のQは・・・・
「歯周病だとウイルス感染しやすい?」です。

歯科衛生士 佐野 成美

2021年1月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その116

Q:妊娠してから歯ぐきが腫れやすくなり、歯磨きをすると出血します。大丈夫でしょうか?
A:△ 歯ぐきが腫れているだけの状態(歯肉炎)であれば、プラークと歯石をきれいに取れば、1~2週間で腫れが引きます。まずは歯磨きが重要です。

歯ぐきが腫れるのは、歯周病菌が悪さをしているのが原因です。歯周病菌の中には、妊婦さんの体内で盛んに分泌される女性ホルモンを栄養源とするものがいて、普段歯ぐきが腫れない人でも歯肉炎(妊娠性)が起こることがあります。この段階ではプラークと歯石をきれいに取れば元に戻ります。歯石は歯科医院で取ってもらってください。しかし、歯肉炎を放っておくと、歯を支えている骨まで破壊され始め歯周炎に進んでしまいます。こうなると治療が複雑になり、妊娠中には治療が困難になる場合もあります。歯周病は低体重児出産(早産)と関係するともいわれているので、妊娠前の検診はとても大切です。

歯周病の一番の予防は、歯磨きを丁寧にしてお口の中を清潔に保つことです。しかし、妊娠中はつわりで歯みがきがつらい方も多いでしょう。そういう時は体調の良い時に1日1回だけでもいいので丁寧に歯みがきをするのが良いです。それも難しい場合は食後に強めのブクブクうがいをしたり、嘔吐直後にも胃酸で歯が溶けないようにうがいをしてください。歯磨き剤の使用がつらいときは無しでも構いません。嘔吐感が出やすい方は、薄型ヘッドや細型ネックの歯ブラシやY型フロスもおすすめです。

こうした予防を頑張っていてもお口の状態に異変を感じた場合は、お早めにかかりつけの歯科医院で診てもらいましょう。
妊娠中でも基本的には通常の歯科治療を受けられますが、安定期である妊娠中期が安全でしょう。

歯科受診の際には・・・

  • ①産科の主治医にご相談の上、ご予約下さい。その際妊娠中であることをお伝え下さい。
  • ②当日は保険証と共に「母子健康手帳」をお忘れなくご持参下さい。
  • ③産科の主治医に注意を受けていることがあれば、お申しつけ下さい。

悪化する前に受診される方が小さな治療で終わり、疲れずに済みます。早期に歯科検診を受けて、歯周病を治療&予防しましょう!

次回のQは・・・・
「インプラントを入れた後、定期的なメンテナンスが大事ってホント?」です。

歯科助手 里 香奈子

  • お役立ち情報一覧
  • 歯科用語解説集
  • 院長・スタッフのコラム
  • 酸蝕症
  • 歯周病9つのギモン
  • 歯磨きの達人