院長・スタッフのコラム

2019年12月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その103

Q:一生もつ詰め物や被せはありますか?
A:一生もちますと断言できる物は正直言ってありません。

治療する側からは一生もってほしいと思っていますが、一生もちますと断言できる物は正直言ってありません。亡くなったときにお口の中に残っていた詰め物は、結果的に一生もったことにはなるのですが。物を買うときにいちいちこれは何年もつかと考えて買う物はそれほどないのに、こと歯の修復物となると何年もつかと歯科医に尋ねる方がおられます。
歯の修復物については、かみ合わせや、かかる力の大きさなど、お口の中の条件は様々であり、また、食事によって毎日影響を受けるため、耐久性については、断言することはむずかしいのです。

ところで最近は修復物の製作が少しは機械化がされてきましたが、基本はまだ手作りです。機械で管理された工場で生産されているわけではありません。また歯を削るときは歯科医がハンドピースを握って、目で見ながら手を動かして行っています。いまのところ機械が自動運転で歯を削るシステムはありません。

一度被せた歯がまた虫歯になるとはどういうことでしょうか。歯と修復物には境目があります。そこにプラークが付いたままだとそこから虫歯になります。どれほど精密に作られてもその境目には20~30マイクロメーターのセメント層が介在しています。歯と修復物は毎食、食物の熱による膨張収縮を繰り返しています。たとえば冷やしたサラダの後に熱いスープやみそ汁を飲む、暖かいハンバーガーと氷の入った冷たいコーラを交互に飲食するなど、そのようなシーンはいくらでもあります。このように、口の中の環境は過酷なのです。温度変化・24時間唾液という水分の中に浸っている、その上咬合力という力がかかっています。最近は研究が進み耐久性のあるセメントが開発されてきていますが、これらの原因によりセメントが徐々に破壊されていき、崩壊し、隙間ができていくのです。従来の金属による修復は金属の膨張率が大きいので、上から見ていて 二次う蝕がないように見えていても、外してみると中が黒くなっている場合が多くあります。
最近注目の オールセラミックによる修復は、セラミックの膨張率が歯に近いので、温度変化に対して歯と同じように膨張収縮するので、セメントの崩壊が少なく、二次カリエスになりにくいと言われています。

何にしろ削っていない歯が一番強いです。まだ現代の歯科医学は自然の歯を超えてはいないのです。ですから前回お伝えしたようにしっかりお手入れをする必要があるのです。

次回のQは・・・・
「治療が終わって安心していたら、定期的メインテナンスをすすめられました。虫歯が治っても通った方がいいんですか?」です。

<院長>

2019年11月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その102

Q:歯の詰め物や被せは、ずっともつものなの?
A:△ 詰め物のもつ期間は、一概には言えませんが、歯のお手入れ次第で長く持たせることができます。

「虫歯を削って、詰め物をしたからもう治ってしまった。」と思われる方は多いかと思いますが、金属の詰め物や被せでは耐用年数が平均5~7年だと言われています。実際に、「銀歯が取れた。」と歯科医院へ来院される患者さんはおられます。もちろん個人差があるので、何十年も問題なく使用している方もいれば、平均年数より少ない年数で外れてしまうケースもあります。

銀歯はどれだけ精巧に作られていても、歯と詰め物との間にはごく微小な隙間があったり、使われたセメントが徐々に崩壊し隙間ができたりして、そこからまた虫歯 (二次う蝕)になることがあります。それにより詰め物が脱落したり、歯髄炎になり詰め物を外さなければならなくなったりします。隙間から細菌が入り込むため、詰め物や被せのはいっていない健全な歯に比べより虫歯になりやすいのです。

では長持ちさせるにはどうすればよいでしょう?
最初に述べた耐用年数はあくまで平均であり、毎日のお手入れ次第でそれは異なります。
二次う蝕を防ぐために最も大事なのは、そもそも虫歯が発生していたお口の環境を変えることです。まずは食生活の見直しをしましょう。砂糖の入った飲料水や菓子類を頻繁または多量摂取していると、虫歯が発生しやすくなります。唾液が減る就寝前の摂取は特に危険です。
次に、再石灰化を促し、歯の表面を強くするフッ素の入った歯磨き剤を使うようにしましょう。成人の場合2cm程度つけて磨き、最後のすすぎは軽く1回に。歯磨き剤を行き渡らせるつもりで、歯の表面にまんべんなく歯ブラシの毛先を充てるように磨きます。また、フッ素入りの洗口液も利用するといいでしょう。
そして最後に、年に数回、定期的に歯科医院に通い修復物の周りの状態をチェックしてもらいましょう。その他のお口のトラブルも早期に見つけてもらえるので安心です。

次回のQは・・・・
「一生もつ詰め物や被せはありますか?」です。

<歯科助手 西川理恵>

2019年10月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その101

Q:犬や猫も歯周病になるって本当?
A:〇 本当です。3歳以上の犬猫では85%以上が歯周病に罹患しているといわれています。

突然ですがペットのワンちゃん、ネコちゃんに歯が何本あるかご存知ですか?
人間の歯は親知らずを含めて32本なのに対し、ネコちゃんは30本。ワンちゃんはなんと42本も永久歯があります!歯の形は人間と全然違いますがワンちゃんネコちゃんの歯にもエナメル質、象牙質、歯髄(歯の神経)、歯肉、歯根膜、歯槽骨(あごの骨)などがあり、内部構造は人間と同じです。

歯の構造が同じということはお口の病気も人間と似ていて、歯周病が一番多いです。
「うちの子がご飯を食べなくなってしまった」と動物病院に連れて行ったら、原因は歯周病だったというパターンがよくあるそうです。「食べなくなった」のではなくて、歯茎が痛くて「食べられなくなった」ということですね。食事をあまり食べないと、栄養不足になります。栄養不足になると免疫力も下がり、病気にもかかりやすくなってしまいます。動物は自分で歯を磨けませんし、自分から「歯が痛い」なんて言ってくれないので、いざ動物病院で診てもらった時には歯周病がかなり進行していることが多いです。3歳以上の犬猫の85%以上が歯周病に罹患していると言われています。人間も成人の8割が歯周病と言われているので、人間と同じですね!ただし、ワンちゃんネコちゃんは歯科治療を行う際には黙って口を開けてくれませんので全身麻酔が必要となります。身体にも負担がかかりますし、できることなら歯周病にかからずに健康な状態を維持したいですよね。

歯周病予防には人間の場合と同じで、何を置いてもやはり歯みがきです。犬猫用の歯ブラシを使って毎日、歯みがきをしてあげてください。動物も人間と一緒で、子どもの頃から歯みがきに慣れていると、大人しく磨かせてくれるようになります。歯ブラシを嫌がる子には、ガーゼや綿の手袋で歯をこすって汚れを取ってあげると良いです。手段はどうあれ歯周病予防には、歯に付着したプラーク(細菌)を除去してあげることがとても大切です。

私も実家で犬を飼っているのですが、子犬の頃から母親が定期的に綿棒で歯に付着したプラークを取ってあげていました。そのおかげか歯周病には罹っていないようで、14歳になった今でも綺麗な歯で毎日おいしくご飯を食べて元気に過ごしています。

人間とペット、歯周病に悩むことが多いのはどちらも同じ。さらに歯周病と腎臓、肝臓、心疾患との関連も研究でわかってきていて、これも人間と同じ。そして予防法も共通しています。ペットと一緒に健やかに生きていくために、私たち人間もお口の健康管理には気を付けましょう。

次回のQは・・・・
「歯の詰め物や被せは、ずっともつものなの?」です。

歯科衛生士 小川綾加

2019年9月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その100

Q:子供が嫌がる仕上げ磨き、何かコツってありますか?
A:はい、あります! 初めが肝心です。赤ちゃんのお口はとても敏感です。いきなり歯ブラシを突っ込むとびっくりして抵抗します。少しずつ慣れるとことから始めましょう。

仕上げ磨きは下の前歯が生えてきたらぜひ始めてください。初めが肝心です。いきなり歯ブラシを突っ込むとびっくりして歯磨き嫌いになってしまいます。赤ちゃんにとって「初めての歯ブラシ」は見たことも触ったこともない変なものなのです。まずはお口のまわりを指で触れたり、中を見せてもらったり、慣れてきたら歯ブラシでやさしく触れてみましょう。

仕上げ磨きで最も重要なのは「安全であること」です。お子さんもお母さんも姿勢が安定していることがとても大事です。立ったままでは転ぶと危険なので絶対にやめてください。お母さんは床に座り、お子さんはお膝の上であおむけになってもらいましょう。こうすると視野が広がり、歯ブラシの動きを目で見て確認でき、うっかり痛いところに当ててしまうことがありません。見えにくいお口の中は、唇や頬を指で上手によけるとよく見えます。ただし指の腹でよけ、爪が当たらないようにしてください。痛いといった不快な経験があると、お子さんががんとして口を開けない原因になってしまうことがあります。

仕上げ磨きは毎日が基本ですがお子さんの機嫌が悪い時、疲れて寝てしまった時、お熱のある時など、無理にすることはありません。1日で虫歯ができるわけではないので、「明日必ずね」と約束して、お休みしてもOKです。磨く人の必死になりすぎる顔もお子さんには恐怖なのです。

お口全体をきれいにすることが大事ですが、とくに虫歯になりやすい場所を知って効率よく予防していきましょう。上下に前歯が生えたら(8~9カ月)離乳食が始まり、虫歯ができやすい環境になってきます。とくに哺乳瓶で飲んだ時にミルクやジュースのたまり場となる「前歯の周り」は要注意です。奥歯が生え始めたら(1歳半~)いろんなものが噛めるようになり、仕上げ磨きは必須です。乳歯の奥歯は丸みがあって大きく、噛み合わせ面には複雑な形の溝があります。また歯と歯の隙間はフロスでお掃除をしてくださいね。つまっていた食べ物が取れ気持ちがいいのでフロス好きなお子さんは多いそうです!

毎日のことである歯みがきの時間、仕上げ磨きが嫌いだったお子さんも、お母さんにとっても「楽しい歯みがきの時間」になりますように!
お子さんの歯を守ることは重要ですが、お母さん一人で抱え込まずに、不安なときは、歯科医院に虫歯予防の相談をしてみましょう。そして、歯に関する、子育ての心配事や不安を少しでも軽くしましょう。

次回のQは・・・・
「犬や猫も歯周病になるって本当?」です。

歯科衛生士 佐野 成美

2019年8月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その99

Q:外出先で歯みがきができないとき、洗口液だけでは効果はないですか?
A:×バイオフィルムの内部に浸透する成分が配合された洗口液であれば効果はあります。

「お口クチュクチュ○○○○○♪」
TVで洗口液のCMをご覧になったことはありますか?タレントさんが洗口液を口に含み数回クチュクチュとして気分爽快!で終わってしまうものが多く、これだけを見ると洗口液だけでお口が綺麗になる!と勘違いしてしまう方もいるかもしれません。3月号のコラムでもお伝えしましたが、歯周病予防のため、洗口液の効果を引き出すには歯みがきとの併用が理想です。
しかし外出先や職場などで歯みがきをする時間がない、洗面スペースがないという方も多いと思います。私自身、医院での昼食後の歯みがきが当たり前になっていますが、前職では休憩時間が短く、歯みがきができないときも多かったです。このような場合には、次の成分を配合した洗口液がおすすめです。ラベルの成分表示を見てみましょう。

●エッセンシャルオイル(チモール、メントールなど)
●ポピドンヨード(イソジン)
これらは、歯の表面に形成されはじめたバイオフィルム内に浸透して、短時間で殺菌作用を発揮します。、時間が経ってバイオフィルムが成熟して厚くなると、効果は弱まります。層が薄いほど浸透できるので、使用は歯みがき後時間を空けず、遅くとも6〜7時間、できれば5時間以内に使用してください。例えば、朝7時に歯みがきをして、昼食後13時に洗口液を使えば効果が発揮できます。

また理想的に洗口液の前に歯みがきができるなら、次の成分の入った洗口液がおすすめです。製品裏面の成分表でご確認ください。
●グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)
●セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)
●ベンゼトニウム塩化物(BTC)
これらは、歯、口の粘膜やバイオフィルムの表面、に付着して、殺菌作用を発揮し、歯の表面などに吸着することで、細菌が集まってバイオフィルムを再形成するのを抑制する効果も期待されます。バイオフィルム内部に浸透する力はないので、歯みがき後、できれば1〜2分(遅くとも1時間以内)で使えるとベストです。

この2つのタイプの洗口液ですが、併用して使うのもおすすめです。ご自宅で歯みがきをした後には後者の表面に付着するタイプを、外出先で歯みがきができないときは前者の浸透するタイプを使うといったように、ご自身の生活スタイルにあわせて洗口液を活用してください。
そして、大事なのが使用方法です。洗口液のラベルには「20〜30秒ほどよくすすいでからはきだしてください」と書かれています。この20〜30秒という時間は意外に長く、実際は短い時間しかすすいでいない方も多いようです。洗口液の効果を十分発揮するためには、しっかりすすいでお使いください。

次回のQは・・・・
「子供が嫌がる仕上げ磨き、何かコツってありますか?」です。

歯科助手 福永沙織

2019年7月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その98

Q:口腔がんについて、日本は先進国の中で唯一死亡数が増えている?
A:〇 WHOから口腔がんの早期発見の促進勧告が出ているにもかかわらず、残念なことに、日、米、英、仏、伊の先進国中口腔がんの死亡者数が増加しているのは日本だけです。

舌がんに罹患したタレントの堀ちえみさんの一件以来、口腔がんが注目されています。口の中のがんについては舌がんくらいしかご存じない方が多いのではないでしょうか。口腔では歯以外の舌、歯肉、頬粘膜口蓋口底、口唇、顎の骨などにがんができる可能性があります。口腔がんは進行がんの状態で見つかることが多く、手術治療では舌、頬顎の一部または全部を切除することもあり術後のQOLの著しい低下から自殺率の非常に高いがんであるといわれています。

私の学生時代には、開業しても口腔がんは一生に一例遭遇するかどうかという位珍しいものであるといわれていました。しかし、近年その口腔がんが急増しています。日、米、英、仏、伊の先進国のなかで、口腔がんの死亡者数が増加しているのは日本だけです。その理由は女性患者の増加、若年化などがあげられます。昔は男女比が3:1だったのが、今は3:2くらいまで女性が増加しています。

口腔がんの死亡率は46.1%です。これは、全身の28部位のがんの中で、第10位となり、決して低くはありません。ここでいう死亡率とはその年にそのがんが原因で死亡した人の数をその年に新たにそのがんに罹患した人の数で除して%にしたものです。その死亡率は大腸、胃、子宮頚部、乳房よりも高いのです。因みに子宮頸がん死亡者数は、1980年頃口腔がんと同数だったのですが、健康診断、人間ドック、ワクチンなどの普及により横ばいになっています。

米国の口腔がんは以前は日本と同じような状況でしたが、啓蒙活動が盛んに行われ、また民間保険の規定で、半年に1回は口腔がん検診を受ける義務があるため、死亡率は19.1%まで下がっています。日本も米国並みの死亡率になれば、年間5000名の方の命が救える勘定になります。それには口腔がんの定期検診する仕組みをもっと普及させる必要があります。

次回のQは・・・・
「外出先で歯みがきができないとき、洗口液だけでは効果はないですか?」です。

院長

2019年6月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その97

Q:乳歯は虫歯になりやすい?
A:〇 乳歯は永久歯に比べ、酸によって歯が溶けやすく虫歯になりやすいです。

乳歯は生後6か月頃から生えはじめ、2~3歳くらいまでに上下合わせて20本生えそろいます。乳歯が生えることで、ものを噛むことができるようになり、子供にとっては「自分の力で噛む」役割を担っています。そしてその後、個人差はありますが、一般的に6歳前後から6~7年かけ乳歯から永久歯へと生えかわります。

乳歯は永久歯に比べエナメル質や象牙質の厚みが薄く、やわらかいといった特徴があります。また、永久歯のエナメル質が溶け出すpHは5.5〜5.7ですが、一方乳歯はそれより低い酸性度pH5.7〜6.2で溶け出し、いったん虫歯になると進行が早く、5~6か月で神経に達することもあります。さらに、虫歯は、隣接面で大きくなったり、広範囲に広がりやすかったりします。

虫歯になる例として、甘いものを飲食し、気づかないうちに糖類を過剰に摂取して虫歯になるケースは非常に多く、その量と特に摂取頻度に気を付けなければなりません。少量でも口の中に糖類がたまる時間が長いほど虫歯になるリスクは高まります。特にアメやガムなどは「だらだら食べ」になりやすいため注意が必要です。おやつを決まった時間に決まった量を食べるという習慣も大切です。

また、口の中をこまめに観察し、磨き残しがないかチェックしてあげることも重要です。
歯が生えはじめる6ケ月頃からハブラシを口の中に入れたり、手に持たせたりするなどしてハブラシに慣れさせ、前歯が生えてきたら歯磨きをはじめます。乳歯が生え揃ったら自分で磨く練習をはじめます。因みに歯磨きをするときの注意は、必ず座ってすることです。というのは口にハブラシをくわえたまま転倒すると喉の奥を突いてしまい非常に危険です。
一般歯科医院では処置できないような外傷となる場合もあります。自分で磨けるようになっても、まだ上手に磨くことはできないため、小学校中学年までは親が「仕上げ磨き」をしてあげましょう。

次回のQは・・・・
「口腔がんについて、日本は先進国の中で唯一死亡数が増えている?」です。

歯科助手 西川理恵

2019年5月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その96

Q:ホワイトニングをすると歯が強くなるって本当ですか?
A:〇 最近ではホワイトニング直後の歯の方が普段より再石灰化が盛んで、歯質強化をしやすいことが明らかになっています。

最近のホワイトニングの薬剤は患者さんのニーズにこたえて漂白効果と低刺激性を両立したものへと進化しています。こうした薬剤の進歩に加え、さらに耳寄りな情報があります。
じつはホワイトニングの薬剤(過酸化水素水、過酸化尿素)はオキシドールの仲間です。殺菌作用があるので唾液に浮遊している虫歯菌や歯周病菌を減らす効果が期待できるのです。

さらにもうひとつ。最近注目されているのが、ホワイトニング直後に起きている歯質の強化!ホワイトニングをすると歯を覆っている透明な膜(ペリクル)が剥がれるのですが、この膜がなくなることで、唾液中のカルシウムなどの成分が邪魔されずに歯に戻ります(再石灰化)。その結果、歯質が硬く丈夫になっていることがさまざまな研究によって明らかになっています。

現在日本で厚生労働省に認可されているホワイトニング用薬剤は、歯科医師が処方するもののみです。しかし最近、海外の薬剤がネットで手軽に入手できるようになりましたが、気になるのが自己流ホワイトニングの弊害です。
虫歯に気付かず薬剤を使って歯髄炎が起きてしまったり、薬剤の使い過ぎで歯茎を傷めてしまったりする事例も少なくありません。歯科医院に定期的にメインテナンスに通うのが当たりまえの欧米人と比べ、日本人の多くは歯が悪くなったら受診するというスタイル。たいへん残念なことですが、知らないうちに虫歯や歯周病になっていた、という方が少なくないのです。
じつはホワイトニングは、歯周病で歯茎が腫れた状態で行うと、薬剤が歯茎から染み出る血液にばかり反応してしまい、肝心の歯に十分に働きません。また、効果が上がらないからと長時間薬剤を使うと、殺菌作用で歯周病の症状は改善するものの、ただれや知覚過敏の症状が悪化するなどのトラブルが起きがちです。

ホワイトニングは自己流で行わず、まずはお口の健康診断もかねて歯科医院に相談にいらしてください。ホワイトニングの効果が望めそうか、ホワイトニングにより痛くなりそうな歯はないかなど診断いたします。ホワイトニングで歯が少しでも白くなると、今まで以上に笑顔に自信を持てるようになりますよ!

次回のQは・・・・
「乳歯は虫歯になりやすい?」です。

歯科衛生士 小川綾加

2019年4月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その95

Q:歯ぎしりって歯に悪いですよね?
A:〇 歯ぎしりをすると強い力が歯にかかってさまざまな悪さをします。

歯ぎしりは寝ている間の無意識下でしているものなので自分ではわからず、誰かに指摘されて気付くことが多いかと思います。実は私も歯ぎしりをしていると自覚していなかったのですが、家人に指摘されて初めて気が付きました。それからは朝起きたときに顎がなんだかしんどいと感じることがあり、日中も知らず知らずのうちに歯をくいしばっていることに気付きました。

歯ぎしりはキリキリと音がしてうるさい単なる悪い癖だと思われがちですが、歯や口に大きな害を与えてしまいます。また噛みしめ・くいしばりのように音のしない歯ぎしりもあり、そちらの方が発生頻度は高いです。
では噛む力はどれくらいの強さなのでしょうか。一般に普通の食事の時に噛む力は数kgから強くても30kg程度です。しかし睡眠中の歯ぎしりは無意識下のため抑制が効かず、50~100kgを超える力がかかり、平均8時間の睡眠中に約40分間も強い力で噛むと言われています。

実際、歯ぎしりがどのような悪さをするかといいますと・・・

・歯にヒビ、すり減り→知覚過敏や虫歯の原因になります。噛み合わせも変わってしまいます。
歯頸部(しけいぶ)の楔状の欠け→知覚過敏になり、欠けた部分に汚れが溜まると虫歯に。
外骨症(がいこつしょう)→顎の骨が歯ぎしりによる力に負けないように増えることです。悪いものではありませんが口の中が狭くなったり、食物の流れが悪くなったりします。
・詰め物がはずれたり、被せ物が削れたり、割れたりする。
・歯根が割れる→抜歯になる場合が多い。
・顎や頭が痛くなる。
このような症状が出てしまう前に早めの対策をとることが重要です。

対策として最もポピュラーなのがマウスピースを使う方法です。夜間にマウスピースを装着し、力のかかり方を修正して歯や顎を守ります。
同時に就寝前にイメージトレーニングをするのも効果的です。「歯ぎしりをしないぞ」と繰り返し唱え自分を暗示にかけます。簡単な割に効果があり、歯ぎしりが4割減るという説もあります。
私はマウスピースを使うようになってから起きた時に顎が楽に感じるようになり、寝ている間に歯ぎしりから歯を守ってもらえているという安心感も得られました。
歯ぎしりをしていると気付いたらマウスピースを作り、早めに対策をとりましょう。
お気軽にご相談ください。

次回のQは・・・・
「ホワイトニングすると歯が強くなるって本当ですか?」です。

歯科衛生士 佐野 成美

2019年3月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その94

Q:マウスウォッシュ(洗口液)と液体ハミガキは同じものですよね?
A:×同じように見えますが、使い方が全く違う別のものです。

最近は口腔ケアへの意識が高まり、歯ブラシだけではなく、フロスや歯間ブラシなどを使って口腔ケアをされる方も増えてきています。マウスウォッシュ=洗口液を使ってみようと思われている方もおられるのではないでしょうか。毎日のケアに洗口液を取り入れるのは素晴らしいことです。

この洗口液ですが、同じ液体タイプの「液体ハミガキ」との違いをご存知でしょうか?
液体タイプの製品を選ぶときには、まずはそれが「洗口液」であるか、「液体ハミガキ」であるかにご注意ください。どちらも同じようなボトルに入っていて同じ棚に並んでいるので、混同して使っている方が意外と多いんです。洗口液は基本的には「歯みがきをした後に使う」、液体ハミガキは「使ってから歯みがきをする」というように、使う順番がまったく逆なのです。液体ハミガキは、その名の通り「液体状の歯みがき剤」ですから、歯を磨く前に使います。液体ハミガキをお口の中に行き渡らせた後、歯磨きをしてください。洗口液は、歯みがき後に使うのが理想的です。というのも、細菌が膜状になったバイオフィルムは歯周病菌や虫歯菌が自らを守るバリアとなり、そのままでは殺菌成分が届きづらいので、歯みがきでバイオフィルムを機械的にとってから洗口液を使用していただくのが理想です。歯みがき後や就寝前の使用がおすすめです。洗口液を使えば歯みがきをしなくてもいいと考えている方もいますが、洗口液は歯みがきの代わりになるものではありませんのでご注意ください。

この洗口液と液体ハミガキですが、見た目が似ている上に製品のラベルにはマウスウォッシュ、デンタルリンス、オーラルリンスと言った表記はされていても、洗口液なのか液体ハミガキなのかは目立つように書かれていないことがよくあります。GUMやLISTERINEのシリーズは両方が販売されています。でも心配いりません!ラベルの四角で囲まれた部分に注目してください。洗口液は「洗口液」、液体ハミガキは「液体ハミガキ」または「液体歯磨」と記載されています。製品ラベルの製品名の下や、成分表示の近くに書かれていることが多いです。また製品名も洗口液は「マウスウォッシュ」「オーラルリンス」、液体ハミガキは「デンタルリンス」と表記されていることが多いです。
しっかりチェックして、ご自身の目的に合った製品を選んでくださいね。

次回のQは・・・・
「歯ぎしりって歯に悪いですか?」です。

<歯科助手 福永沙織>

2019年2月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その93

Q:抗がん剤や放射線治療の副作用に、吐き気や脱毛があるそうですが、口も関係があるのですか?
A:○ 抗がん剤治療や頭頚部周辺の放射線治療では高い割合で口内炎が起こります。それらの治療の前中後に歯科を受診して口腔ケアを受けることにより、副作用や合併症を抑えられ、がん治療の効果が上がります。必ず受診してください。

2018年9月号コラムでは、がんの手術の際歯科を受診し口腔ケアを受けることにより、手術時のトラブルや合併症を抑えることができ、入院日数の短縮にもつながっていることをお知らせしました。

一般に、抗がん剤治療や放射線治療には吐き気や脱毛の副作用があることはよく知られていますが、これらの治療中には口腔内にもさまざまなトラブル起きやすくなっています。
全身に投与される抗がん剤でがん細胞をたたくと、同時に健康な細胞も傷つきます。特に口の粘膜は細胞分裂が活発な部位なので40%もの人に口内炎が発症し、疼痛のため経口摂取が困難になり、その結果QOLが著しく低下します。この時の口内炎は、だれでも時々起るアフタ性口内炎よりもっと範囲が広く激しい苦痛を伴います。口内炎以外には、免疫力、体力低下により根尖病巣(こんせんびょうそう)、歯周炎などの慢性炎症の急性増悪、口腔内常在菌による日和見感染であるカンジダ症、ヘルペス、味覚障害などもみられます。

また、頭頚部の放射線治療では放射線の当たった箇所に、ほぼ100%の割合で粘膜炎が起こります。ひどい粘膜炎のため食事がとれず治療を中断しなければならないことも起こります。放射線で唾液腺がダメージを受けると唾液が出にくくなるため、虫歯が増えたり、味覚が落ちたりもします。放射線の晩期障害である骨髄炎や顎骨壊死は、放射線治療後の抜歯と歯周病の悪化をきっかけとして発症することがあり、不良な歯は可能であれば放射線開始前の抜歯が推奨されています。

しかしこのような副作用は、術前に歯石やプラークを除去し口腔内の細菌を少なくする口腔ケアを受けておくと、口内炎、誤嚥性肺炎、敗血症などの合併症がぐっと減り、がんの治療効果が格段に上がることが認められています。また、術中の口腔ケアにより、がん治療がスムーズに進み、完遂できることは、がんの予後に深くかかわってきます。
現在ではがん治療を始める前に、まず歯科で口腔ケアを受けることが必須となっています。

次回のQは・・・・
「マウスウォッシュ(洗口液)と液体ハミガキは同じものですよね?」です。

<院長>

2019年1月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その92

Q:親知らずは、痛みがなければ抜かなくてもいいですよね?
A:△親知らずが生えている方向によっては、その前方の歯や周囲に悪影響を与えることがあります。現在痛みがなくても一度歯科医院を受診していただくと安心です。

まず初めに親知らずについてお話します。
親知らずとは、赤ん坊の歯の生え始めと違い、生えてくるのが多くの場合親元を離れる頃で(平均的には18歳~20歳ごろ)、親が歯の生え始めを知ることがないので「親知らず」という名前がついたと言われています。

太古の昔、人間は木の実や生肉など硬いものが中心の食生活でした。そのため食べる際はよく噛む必要があり、顎の骨がよく発達し大きかったので親知らずが生えてくるスペースが十分にありました。歯は生きていくために不可欠であり、親知らずにも大きな意味があったと考えられます。
一方、現代の食生活は加工食品が中心で硬い物を咬むことが少なくなったため、顎は退化傾向にあり徐々に小さくなっています。すると、一番最後に生えてくる親知らずのスペースが足りなくなり、きちんと生えなくなるケースが増えてきました。

ではどのような場合、親知らずを抜いたほうがいいのか説明していきます。

①親知らずが虫歯や歯周病になっている 親知らずは歯ブラシが届きにくく虫歯や歯周病が進みやすい歯です。
親知らずは奥まっているため虫歯治療がしにくく、うまくいかない場合があります。
②親知らずがうまく噛み合わず歯茎や頬の粘膜を傷つけている 噛み合う歯がなければ歯はどんどん伸びていき、向かいの歯茎や頬の粘膜を噛むようになり痛みを引き起こします。また、親知らず同士で咬み合っている場合、一方の親知らずを抜くと、もう一方の親知らずが伸び、結局その歯も抜くことになる場合もあります。 ③前方の歯に悪影響がある場合 親知らずが半分埋まっている場合、前の歯との間に隙間ができ、食片がたまり虫歯になりやすくなります。
生え方によっては、前の歯を押してその歯が痛くなることもあります。また矯正治療を受けて歯並びがきれいになったのに、親知らずに押されて歯並びが乱れる恐れのある時も前もって抜歯します。

親知らずがまっすぐ生え、上下の歯が噛み合っている場合は抜く必要はありません。しかしそのようなケースはまれです。
痛くもないのになぜ抜歯?と疑問に思う方も多いかもしれませんが、将来的なリスクを考え歯科医院では抜歯の提案をするのです。

次回のQは・・・・
「抗がん剤や放射線治療の副作用に、吐き気や脱毛があるそうですが、口も関係があるのですか?」です。

<歯科助手 西川理恵>

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