院長・スタッフのコラム

2014年12月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その43

Q:チーズが虫歯予防になるって聞いたけど本当?
A:○ 本当です。

チーズにはリン酸やカルシウムがたくさん含まれています。リン酸には、唾液のpHが酸性に傾き歯の表面が溶けて虫歯になるのを防ぐ作用があります。またカルシウムが唾液中に多く供給されると再石灰化(歯の表面からその成分が溶け出しても再び硬い歯質に戻る)を助けます。

皆さんは虫歯になりやすい食品はご存知ですね。

甘い物、砂糖がたくさん含まれた食べ物や飲み物が挙げられると思います。

虫歯の原因菌であるミュータンス菌が砂糖を分解し、酸を産生し、虫歯を作るからです。またこれは砂糖だけに限らず炭水化物全般に言えることです。

これに対して、虫歯のリスクを低下させる食品もあります。

意外に知られていないのはチーズです。中でも水分の少ない熟成期間の長いハードタイプのチーズは虫歯のリスクを低くする食品としてWHO(世界保健機関)が認めています。

これは、チーズにはリン酸やカルシウムがたくさん含まれていることによります。リン酸には、唾液のpHが酸性に傾き歯の表面が溶けて虫歯になるのを防ぐ作用があります。

そして、カルシウムが唾液中に多く供給されると 再石灰化(歯の表面からその成分が溶け出しても再び硬い歯質に戻る)を助けます。ちなみにハードタイプのチーズには、パルミジャーノ・レッジャー、ミモレット、チェダーなどがあります。

また、チーズは口の中のアルカリ性を強めて歯が溶け出すことを防ぎ、さらに歯の表面に保護膜を形成するため、虫歯予防になります。キシリトールや食物繊維も虫歯予防に役立つ食べ物として挙げられていますが、チーズほどではないようです。

このように虫歯と食べ物には何らかの関連性があります。

虫歯の予防には、「いつ、何を食べるのか」にも関心を向け、正しい食生活を身につけることが大切です。

次回のQは・・・・
「虫歯に詰め物をしてもらったのにしみるのは、虫歯が残っているの?」です。

<歯科衛生士 小川綾加>

2014年11月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その42

Q:ゼロカロリーコーラはノンシュガーだから歯にもいいわよね?
A:× 酸味成分のクエン酸、リン酸や炭酸による酸蝕症で歯が溶ける心配があります。

最近はノンシュガーと書かれた炭酸入りの飲み物がたくさんありますね。

皆さんも飲まれる機会が多いのではありませんか?

ノンシュガーなのでダイエットにもなり、砂糖も入っていないので虫歯にもならないから歯にもいい健康食品だと思っている方も多いのではないでしょうか。

確かに、虫歯菌のエサとなり酸を作るもとになる砂糖は入っていないのですが、コーラの酸味成分であるクエン酸やリン酸、炭酸によって起こる 酸蝕症 が心配です。ちなみにこの3つの酸のなかでは、クエン酸が一番強く歯を溶かす酸です。

酸蝕症とは、酸性度の強い飲み物や食べ物を過剰にまた長時間摂取した時、その酸に触れた歯が溶けてしまうという病気です。最近歯科の分野では増加傾向にあり、問題になりつつある病気です。エナメル質が溶けるpHは5.5~5.7で、コーラのpHは3くらいですからより酸性度が強く、摂取の仕方によっては、充分に歯が溶けてしまいます。

普通の食事の中で摂られる酸ならば唾液が洗い流してくれるので心配はいりませんが、長時間飲食したり、ちょびちょび飲んだりしていると、酸が長い間歯に触れているので歯にはよくありません。また酸蝕の可能性のある飲料水を口に長く貯めてから飲み下すのも歯を溶かしやすい飲み方です。

ではどういう飲み方が歯には良いのでしょうか。それは一気飲みです。お酒の一気飲みは危険ですが、酸性の飲み物は酸と歯との接触を短時間にするために、一気飲みが良いのです。

次回のQは・・・・
「チーズが虫歯予防になるって聞いたけど本当?」です。

<受付 田中由香>

2014年10月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その41

Q:口が渇くからあめを食べているけど、ノンシュガーだから歯には悪くないわよね?
A:× 糖類0.5%未満ならノンシュガー、シュガーレスなどの表示が許可されていて、これらの中には微量ですが糖類が入っている場合があります。また、酸味料が含まれる場合、口の中に酸が長く留まると歯を溶かすことがあります。

何となく口がさみしいのでふだんからよくあめをなめるなんて方は多いのではないでしょうか?特に年配の女性によく見受けられますよね。年齢とともに唾液が減ると、舌がなめらかに動かなくて話しにくくなったり、くちびるが前歯にくっつきやすくなったりします。こんなときにあめを舐めると唾液がよく出て不快感はなくなります。

最近では“ノンジュガー”と書いてあるあめも売られているので、砂糖をカットしてあるのだから絶対虫歯にならないと思ってなめている方も多いようです。しかし、これが意外と落とし穴なのです。製品の栄養成分表示で糖類0グラムなら問題はありませんが、糖類0.5%未満ならノンシュガー、シュガーレス、無糖、糖類ゼロなどの表示が許可されているので、これらは糖類が完全にカットされているとは限りません。また「糖類が低い」意味での低、ひかえめ、ライト、ダイエット、オフなどの表示は食品では5%未満、飲料では2.5%未満が基準値となっています。

また、酸味料が含まれる場合、多くはクエン酸やビタミンCが入っていますが、口の中に酸が長く留まると歯を溶かし続け、いわゆる酸蝕症になってしまう危険性もあります。

口が渇くのであめをなめたり、ガムを噛むなら「特定保健用食品」(虫歯の原因になりにくい食品:キシリトール、マルチトール、パラチノースなど)や「トゥースフレンドリー協会認定食品」(食後虫歯のできるpHまで下がらない食品)のマークがついているものをお勧めします。

次回のQは・・・・
「ゼロカロリーコーラはノンシュガーだから歯にもいいわよね?」です。

<歯科衛生士 神田和美>

2014年9月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その40

Q:毎日歯を白くする成分の入った歯磨き粉を使っているけど、ちっとも白くならないのは、量が足りないのでしょうか?
A:× 歯磨き粉では着色は取れても、歯を元の色より白くすることはできません。

現在日本で市販されている歯磨き粉には ステイン(歯の表面につく着色汚れ)を除去する効果はあっても歯を元の色より白くする漂白効果はありません。日本の薬事法では歯磨き粉にホワイトニング剤を配合することが禁じられているので、現状では歯磨き粉だけでは歯を元の色より白くするのは無理です。

歯磨き剤の宣伝で「歯を白くする」とか「ホワイトニング効果あり」とうたっている場合、これはステイン除去、すなわち歯の表面のクリーニング効果だけのことなので、間違わないように注意しましょう。

そのような歯磨き剤は普通のものより研磨剤が多めに入っていたり、弱い酸で表面を少し溶かして汚れが取れやすくする成分が入っていたりします。これらは使い方を誤るとエナメル質が傷つき知覚過敏になったり、ゴシゴシ磨きすぎてエナメル質が薄くなるとその下にある象牙質の色が透けて見え、より黄色っぽくなったりします。

ホワイトニング で歯を元より白くするには、歯科医院でオフィスホワイトニングを受けるか、歯科医院で処方されたものを自宅で使用してホームホワイトニングをするかの二つの方法のみです。これらのホワイトニング剤には過酸化水素や過酸化尿素が含まれており、歯の表面だけではなくしみ込んだ汚れも分解されて白くなります。

ホワイトニングを詳しく知りたい方は是非、歯科医院でお聞き下さい。

次回のQは・・・・
「口が渇くからあめを食べているけど、ノンシュガーだから歯には悪くないわよね?」です。

<歯科衛生士 小川綾加>

2014年8月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その39

Q:歯がしみるので歯磨きを一生懸命やってるんだけど。いいのかなあ?
A:△ 虫歯なら詰まっていた食べかすが取れて、痛みが和らぐこともありますが、知覚過敏では逆に余計にしみるようになります。

今月も7月号と同じく知覚過敏の話です。

知覚過敏になるとなぜあれほど、キーンとしみるのでしょうか。それは、歯冠 を覆っているエナメル質が部分的に欠けて象牙質がむきだしになっているからです。象牙質は 歯髄 の神経とつながっているので刺激が直接伝わってしまいます。

今でこそ「知覚過敏」という用語は一般の方の間でも広く知られるようになりましたが、2~30年前はそうではなく、症例数も多くありませんでした。ここにきて急激に増加したのはなぜでしょうか。

それは知覚過敏の1番の原因が歯ぎしりや噛みしめであり、それらは何のためにするのかはまだ解明されたわけではありませんが、ほぼストレスの発散であろうと考えられています。現代日本はストレス社会です。当院ではそれを実感するくらい多くの知覚過敏の方の治療を毎日のようにしています。知覚過敏はいわば現代病の一つと言えます。

知覚過敏のメカニズム

ではなぜ歯ぎしりをすると知覚過敏が起こるのでしょうか。図にそのメカニズムを示しています。歯根は硬い骨の中に固定されていますが、歯冠は歯肉から上に出ています。食事をするとき、下顎は主に上下に動きますが、歯ぎしりのときは横方向への力が非常に強く働きます。そうすると歯頚部に応力が集中します。エナメル質は体の中で一番硬い組織ですが脆い性質があるので、ポロポロと欠けてしまうのです。

では知覚過敏になってしまったらどうすればいいでしょうか。

まずは少し柔らかめの歯ブラシで優しくブラッシングしてください。そして、我慢しないで診察を受けましょう。歯科医院では強く当たっている歯を少し削って咬みあわせの調整をしたり、コーティング剤を塗布したり、プラスティックを詰めたりします。

しかし、根本的には歯ぎしりをコントロールしなければすぐに再発してしまいます。歯ぎしりによる歯のすり減りや、力による悪影響を防ぐには、就寝時にマウスピースを装着するのは有効な方法といえます。

効果的な治療やセルフケアで、痛みをなくして快適な生活を送りましょう。

次回のQは・・・・
「毎日歯を白くする成分の入った歯磨き粉を使っているけど、ちっとも白くならないのは使い足りないからでしょうか?」です。

<院長>

2014年7月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その38

Q:キーンとしみることがあるけど、よく言う知覚過敏だから大丈夫よね?
A:× 痛みが必ずしも知覚過敏とは限らず、「虫歯ができた」という歯髄からのサインかもしれません。

知覚過敏は、正しくは象牙質知覚過敏とよびます。知覚過敏とは、エナメル質が虫歯以外の何らかの原因で傷み、剥き出しになった象牙質がうける刺激が 歯髄に伝わって起こるものです。特に冷たいものがしみたり、歯ブラシの毛先が触れるとキーンと一過性の強い痛みを感じます。

しかし初期の虫歯の場合も冷たいものによって痛むので、その症状だけではどちらが起こっているかの判断は困難です。「知覚過敏は病気ではないから大丈夫」と思っている方がおられるかもしれませんが、「虫歯ができた」という歯髄からのサインなのかもしれないのです。

知覚過敏なら剥き出しになった象牙質をカバーすることで痛みは止まりますが、虫歯の場合は、悪くなった部分を削って詰めたり、神経をとったりする必要があります。

ほんとうに虫歯なのか、歯周病で歯茎がやせ歯根の象牙質が露出したり、かみしめや歯ぎしりによりエナメル質が傷んで、剥がれたり欠けたりしたことによる知覚過敏なのか、勝手に判断せず、歯科医院で一度診てもらいましょう。

次回のQは・・・・
「歯がしみるので歯磨きを一生懸命やってるんだけど。いいのかなあ?」です。

<受付 田中由香>

2014年6月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その37

Q:最近、歯茎がやせたんだけどダイエットしたから?
A:× ダイエットでは歯茎はやせません。

「ダイエット」とは基本的に脂肪を減らすという行為です。赤身の肉をそぎ落とすのではなく、脂身を燃やすことです。お腹周りなどにはたくさん脂肪組織がありますが、歯肉にはこの脂肪組織がありません。つまり燃やす脂肪組織自体がないのです。

口腔内では上あごや頬の粘膜には脂肪組織が存在し、体がやせると頬もやせるのですが、歯茎ではそのようなことはありません。

脂肪組織が存在する場所は一般的に粘膜下組織と呼ばれるところですが、歯茎には、この粘膜下組織がないのです。

エネルギーを脂肪の形で貯蔵するお腹はダイエットをするとへこみ、食べ過ぎると膨らみますが、歯茎は変わりません。

しかしダイエットでは歯茎は痩せませんが、別の原因で歯茎も痩せることがあります。よく見受けるその痩せる場合は主に大きく分けて二つあります。

一つは、歯ブラシが強く当たり過ぎていた場合、たとえば硬い大きな歯ブラシを力強く大きいストロークで動かす癖がある方においては、歯茎が痩せることがあります。

もう一つは、歯周病が進行した場合で、それに合わせて歯を支えている周りの歯槽骨が痩せていき、その上にかぶっている歯茎も一緒に下がっていきます。

以上のようにダイエットをして体重が落ちても、歯茎自体が痩せることはないので安心ですが、歯ブラシの当たり過ぎや歯周病などが原因で歯茎が痩せることがあります。もしそのようになってきたときは歯科医院できっちり診断してもらうことが必要です。

参考文献:デンタルハイジーン 2013 vol.33 no.5

次回のQは・・・・
「キーンとしみることがあるけど、よく言う知覚過敏だからほっておいても大丈夫よね?」です。

<歯科衛生士 神田和美>

2014年5月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その36

Q:歯の神経を歯科医院で取ったはずなのにまだ歯が痛むのは治療が悪いの?
A:× 痛みはすぐにはとれません。

歯の神経をとったらすぐに痛みがひくはずだと思っておられる方が多くいらっしゃるようですが、これは間違いです。

虫歯や歯の破折が原因で痛みが止まらないとき、治療では 抜髄(ばつずい)という処置を行います。抜髄とは神経(歯髄)を取ることで、日常茶飯に行われていますがほんとうは非常に難しい処置なのです。

歯の神経は、歯根の先端から出て顎の骨の中を通って、三又神経から脳へと繋がっています。この神経を歯根の先端で切り取るわけですから、ケガをした時と同様、ズーンズーンという痛みが数日は続き、通常はその後落ち着いていきます。抜髄の直後は切断された神経の向こう側の先はまだ生きているので、次の治療の時に歯根の先端を器具で触れると痛みを感じます。そのとき患者さんは、「前回神経を取ったはずなのにまだ取りきれていないのでは?」と思ってしまうのです。

抜髄は神経の歯の中の部分だけを取るので、歯根膜や歯肉などの歯の外側にある神経は残っています。そのため感染が強く歯の外側にも影響が及ぶと、こうした器官の関与する違和感や痛みが生じることもあります。

図

また歯の神経は解剖学的に複雑な形態をしているので、抜髄は技術的に困難を伴います。図のような枝分かれはCTでも見えませんし、たとえ見えたとしても必ずしも器具が到達できるわけではありません。メインの神経しか確実には取りきれないので、取りきれない神経は薬で固めてしまいます。

このように歯の神経をとるというのは、電気のコンセントを抜くようなものではありません。

神経をとったのに痛い!!!イコールおかしいというわけではないので治療が失敗したと思って、すぐ他院へ行くのではなく、根気よく治療を受けましょう。

次回のQは・・・・
「最近、歯茎がやせたんだけどダイエットしたから?」です。

<歯科衛生士 小川綾加>

2014年4月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その35

Q:デンタルリンスでうがいするだけで口臭予防は十分でしょう?
A:△ 一般のデンタルリンスでは確実に口臭を消すことはできません。

一般に市販されているデンタルリンスや歯磨き剤にはほとんどの場合、口臭予防の薬効が記載されています。しかし、今存在する口臭を即座に消してしまうデンタルリンスは数えるほどしかありません。大多数の製品には、薬液自体に味やにおいをつけてあるため、使用後はとりあえず口臭がなくなったかのように感じます。つまりマスキング効果です。

ところが、口臭と薬液のにおいが混ざり合って余計に嫌なにおいになる場合もあります。そして本当の口臭は、他からにおいをつけただけで消してしまうことはできないのです。

現在市販のデンタルリンスで確実に口臭を消す製品には、その成分中に、塩化亜鉛か二酸化塩素が入っています。

塩化亜鉛の場合は、揮発性硫黄化合物(口臭ガス:VSC)と結合して臭い成分を不揮発化します。つまり、臭わなくなります。そして臭いの元である剥離上皮、血液,食物などの蛋白質を分解してVSCを発生する酵素を阻害し、新たな口臭ガスの発生を抑制します。

二酸化塩素は、発生する酸素が作用して細菌の細胞膜を分解する酸化殺菌で、いままでの塩素殺菌よりはるかに強力で即効性、持続性に優れています。また、この二酸化塩素が口臭ガスに直接作用し、臭い分子を分解し、悪臭を除去します。さらに、口内細菌を強力に殺菌するので口臭除去だけでなく、歯周病菌も抑えます。

しかし、一般のデンタルリンスに含まれる殺菌剤はそれほど強力ではありません。

口臭を予防するには、すべてをデンタルリンスに頼るのではなく、臭いの元となる上記の蛋白質を除去したり、プラークを除去したりするために、毎日、舌クリーナーや歯ブラシを使用することは言うまでもありません。

次回のQは・・・・
「歯の神経をとったのにまだ歯が痛いのは治療が悪いの?」です。

<院長>

2014年3月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その34

Q:デンタルリンスでうがいするだけで虫歯予防は十分でしょう?
A:× プラークは歯磨き等でしか取れません。

最近では様々なデンタルリンスがドラッグストアーやスーパーなどで販売されています。

虫歯や歯周病が予防できる成分が入ったデンタルリンスもたくさんありますが、デンタルリンスだけではそれらの予防ができるわけではありません。

デンタルリンスは殺菌剤入りの製品が多く、予防には少しの効果はあります。

しかし、うがいだけで十分か?というと話は違ってきます。

虫歯菌や歯周病菌は細菌単体で口の中を漂っているわけではありません。細菌が作ったネバネバの物質の中に、衣を被ったような状態で生きているのです。それをプラーク(歯垢)とよびます。ただ漂っている細菌なら殺菌剤が効きますが、プラークの中までは殺菌剤は浸み込んでいかないのです。

ですから、虫歯菌や歯周病菌を殺すというよりもプラークごと物理的機械的に取り去ってしまって口の中をきれいにしようというわけです。それには歯磨きが一番です。

しかし、歯磨きだけで歯のすべての表面をきれいにできるかというと、それも限界があり歯ブラシの毛先が届かない歯と歯の間は、フロスや歯間ブラシなどを使用する必要があります。それでも100%完全にきれいにすることは難しく、歯科衛生士が特殊な器具を使って隅々まできれいにする PMTC と呼ばれる処置があるのです。

ですから、どれも非常に原始的な方法ですが、プラークは擦って取るしかないのです。

デンタルリンスを過信せず、必ず歯磨きと一緒に使いましょう。

次回のQは・・・・
「デンタルリンスでうがいするだけで口臭予防は十分でしょう?」です。

<受付 田中由香>

2014年2月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その33

Q:虫歯の痛みが、いつの間にかなくなったのは、自然に炎症が治まったってことですか?
A:× 炎症がひどすぎて歯髄が死んでしまったか、歯髄を圧迫していた膿が出て楽になっただけかもしれません。

虫歯の痛みはある時は、ものすごく痛くて我慢できませんが、ある時期を超えると嘘のように痛みが消えてしまうことがあります。

痛いときにしか、歯科医院へ行かない方は「痛くないからいいや」と思い、放っておいてしまう方もおられるかもしれません。

しかし、すぐに歯科医院へ行ってください。

一般に虫歯は、初期の段階では冷たいものがしみ、その後暖かいものでも痛みだし、もっと進行すると何もしなくてもズキズキと痛みます。その後歯肉が腫れることもありますが、炎症により歯髄がすべて死んでしまいますと、痛みのセンサーとしての歯髄の機能が働かなくなり、痛みを感じなくなる場合もあります。また歯髄を圧迫していた膿が出ただけで楽になることがあるかもしれません。

この場合、痛みがなくなったからといって良い状態というわけではないのです。何もしないでこのまま放置していると、どんどん周りの組織にも感染が広がっていき、からだの抵抗力が落ちた時に眠っていた細菌が急に活動しだし、突然猛烈に痛むことがあります。

歯髄が細菌感染をしてひどい炎症が起きると、歯の構造上、硬い歯質の中の細いスペースに入っている歯髄は血液の循環が悪いため、薬が届きにくく歯科治療なしには決して自然に治癒することはありません。

治療を先延ばしにしていると、治療が困難になり結果として歯を抜かなければ治らない状態まで炎症が進む恐れがあります。虫歯に気づいたら小さいうちに早めに歯科医院へ行きましょう。また定期的にメインテナンスを受け、早期発見と虫歯予防を心がけることも大切です。

次回のQは・・・・
「デンタルリンスでうがいするだけで虫歯予防は十分でしょう?」です。

<歯科衛生士 神田和美>

2014年1月号

「歯科 ウソ&ホント」シリーズ その32

Q:フッ素入りの歯磨き粉を使っているけど、量は歯ブラシの先に少しつけるだけでいいの?
A:× 毛先の半分以上に歯磨き粉をつけないと意味がありません。

皆さんは歯磨きをする時に、歯磨き粉はどれくらいつけられますか?

確かに発泡性も研磨性も高かった昔の歯磨き粉では、磨いた気になってしまうので、パール大、つまり少しの量を歯ブラシにつけるように指導していました。

また、一方歯ブラシの植毛の長さ全部につけるなど、多すぎると、歯磨きをしている途中に口の中が泡だらけになって、すぐにうがいをしたくなり長時間磨きにくくなります。

歯磨き粉を使用する一番の目的は、薬効成分特にフッ素を効かせることなので、毛先につける量が少ないとフッ素の効果が十分に発揮できなくなります。

最小でも年齢に応じたサイズの歯ブラシの毛先に半分以上はつけなければ、歯磨き後に口の中に残るフッ素の量が少なすぎて、すぐに 再石灰化促進効果がなくなってしまうのです。

さらに歯磨き粉の量が適切でも、歯磨き後のうがいの回数が多すぎるとフッ素が口の中に留まらず、フッ素濃度が維持できません。歯磨き後は良くうがいをして、よごれを口の中からきれいさっぱりしたいと思うのが人情ですが、うがいは「少量の水で一回(多くても三回まで)」にしていただく方がいいのです。

せっかくフッ素入りの歯磨き粉を使って歯磨きをされるなら、出来る限りフッ素を口の中に留めるよう心がけて下さいね。

次回のQは・・・・
「虫歯で痛かったけどいつの間にか痛くなくなったのは、自然に炎症が治まったってことですか?」です。

<歯科衛生士 小川綾加>

あけましておめでとうございます
本年も当コラムをお読みいただきありがとうございます。
引き続きご愛読賜りますようよろしくお願い申しあげます。

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