2024年10月号
歯磨きの上達がなぜ必須なのかというと、プラークを的確に取る方法を患者さんにマスターしていただかないと、歯科医院でいくら治療しても次の日からまたプラークが溜まりはじめるので、炎症が止まりません。
そして、炎症で腫れた歯周ポケットのなかを歯石除去に使う器具でゴリゴリとお掃除しても痛みが出やすくそのままの状態ではきれいにお掃除はできません。
更に歯磨きをすると血が出るような歯茎の状態では器具が軽く触れるだけでも出血してしまいます。この状態では歯周ポケットのなかの確認が難しく、徹底した歯石除去がしづらくなってしまいます。
適切な歯磨き法をマスターすると、プラークが減り、歯茎の腫れが落ち着いて硬い歯茎になっていきます。歯と歯茎の境目にたまるプラークを自分で減らすことができるようになったら、歯周病の治療は次の段階に入ります。見えている範囲の汚れは落とせても歯茎の深いところにたまっているプラークは歯ブラシが届かず落とすことができないので細い器具を使って歯石をしっかりと取り除いていきます。歯石はプラークに中にいる細菌の死骸や唾液の中のカルシウムが固まった軽石状の付着物で、歯の見えるところだけではなく、歯周ポケットの奥深くにもつきます。これを取り除かないかぎりプラークは温存され、歯周病再発の原因を取り去ることができないのです。
患者さんの中には、きれいに毎日歯磨きさえすれば歯医者に通わなくても歯周病を治せると思っている方もおられると思いますが、自分では取れない深い部分についた歯石を取らないままでは、歯周病の炎症を根元から止めることはできないのです。何回か通っていただき、歯石除去を受けていただきます。
そして、この治療でしっかりと歯石が除去でき、患者さんが毎日適切な歯磨きを続けてくださると自然と炎症が止まりピンク色の歯茎が戻ってきます。歯周病を放っておくと治療が大掛かりになりやすいので治療開始はぜひお早めに行うことをお勧めします。
次回のQは・・・・
「歯の詰め物を飲み込んじゃった‼これって大丈夫?」です。
歯科助手 木下 彩
2024年9月号
抜歯後は歯科医院で注意事項を言われると思いますので、それに従って過ごすようにしてください。もし痛みや腫れ出血などで心配なことがあった場合は無理せず連絡してくださいね。
次回のQは・・・・
「なぜ歯周病の治療は歯磨き指導からなのですか?」です。
受付 中村りこ
2024年8月号
昔は妊娠すると、赤ちゃんの歯を作るためお母さんの歯のカルシウムが溶けていくので、お母さんの歯が悪くなるといわれていましたが、これは迷信です。実際は妊娠による女性ホルモンの増加によって、歯周病菌が増殖し、歯周病になりやすくなるからです。また、つわりで歯みがきがしにくくなったり、飲食物の好みが変わったり、食事や間食の回数の増加などによりプラークや歯石が付きやすくなります。さらに唾液が酸性に傾き、唾液の再石灰化をうながす力が弱まり、お口の中をきれいにする自浄作用も低下することで、虫歯にもなりやすくなるのです。
これらを聞くととても不安になってしまいますが、歯周病やむし歯の主な原因はプラークです。口腔ケアや歯石の除去により、予防や改善は可能といえます
妊娠中は、プラークがたまりやすいためご自身での口腔ケアも大切です。しかし、つわりで気持ち悪くなったり、歯みがきが非常につらく感じたりする方もいるのではないでしょうか?
妊娠中の歯みがきの工夫をいくつかご紹介します。
もし磨き方を工夫しても歯みがきが全くできない場合は、比較的体調がよいときに、デンタルフロスなどの補助的清掃用具の使用や、食事のあとにお茶やお水でうがいをするだけでも多少の予防効果が得られます。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
当院では妊娠期、出産後に行う豊中市妊産婦健診を実施しています。歯周病菌の産生する酵素活性の測定、虫歯の有無、歯肉炎の有無、歯石がどの程度付いているかなども検査しますので、ぜひご来院ください。
次回のQは・・・・
「抜歯をすることになったのですが、なにか抜歯前に気をつけることはありますか?」です。
歯科衛生士 福井万緒
2024年7月号
一般的にむし歯や歯が抜けたところには、プラスチック、金属、セラミックスなどの詰め物や被せで治療がされます。それらは歯科用セメントで歯に装着されますが、一生涯取れませんといえるセメントはありません。口腔内は非常に過酷な環境にあります。というのは唾液という水分の中に絶えず浸っており、その上食事や歯ぎしり時には強い力がかかっています。またアイスクリームから味噌汁まで100度近い温度変化もあります。そのような状況下でセメントは徐々に崩壊していき、隙間ができそこから2次的にむし歯になったり、外れたりします。
では食事中に外れたとわかったらどうすればいいのでしょうか。とにかく焦らず外れたものをとりだしてください。そして医院に連絡しなるべく早くご来院ください。ご自分で瞬間接着剤などで付けるのは、絶対お控えください。市販の接着剤は体内での使用は考えられておりませんし、曲がって接着されてしまうとリカバーできなくなるときもあります。できるだけ早くというのは、時間が経つと前後の歯や咬みあう相手の歯が動いてしまって元の位置に戻らなくなる場合があるからです。若い方の方が歯が動くスピードは速いです。また外れたままにしておくと歯が欠けたり、舌が傷ついたり、歯ぐきに食物が挟まり炎症が起きることもあります。もちろん中が大きくむし歯になっていたら、再度削って再製しなければならないときもあります。
ところで最近の治療は、金属よりもセラミックスでという流れになっています。それは見た目に綺麗なだけでなく、健康のために体内にはなるべく金属をいれないようにすることと、セラミックスの方がよりむし歯になりにくいためです。それは次のように考えられています。食物の温度変化により、歯質も詰め物、被せの材料もわずかですが、膨張、収縮を日々くりかえしています。歯とそれら材料との膨張係数の差が大きいものほど、歯と材料との間にあるセメントが破壊され、そのぶん隙間ができやすいということになります。
セラミックスが優れているのは、金属より膨張係数が歯質に近いので、隙間ができにくいという理由からです。
因みに最近は保険診療でも白い材料が採用されてきています。それはセラミックスとプラスチックのハイブリッド材料で、条件は付きますがかなりの範囲をカバーできるようになりました。詳しくは院長にお尋ねください。
次回のQは・・・・
「妊娠中に歯が悪くなると聞きますが、本当ですか?」です。
院長
2024年6月号
患者さんのお口の中の健康は年齢とともに変化するだけではありません。例えば、一人暮らしを始めた、出産した、介護で忙しくなった、退職した、など色々なライフステージの変化にも大きな影響を受けます。また、日々プラークを適切に除去できていなかったために気付かないうちに歯周病が進んでいる場合もあります。歯周病はプラーク除去不足の積み重ねによって起きますが、逆にやりすぎによって起きる弊害もあります。それは、強く力を入れ過ぎたゴシゴシみがきによる歯ぐきの退縮です。歯の根はむし歯に弱い象牙質で、通常は歯ぐきに覆われ守られています。しかし、長年、自己流の歯みがきで歯ぐきをこすり続けると歯ぐきが退縮して歯根の象牙質が露出します。歯みがきのやりかたに問題がある方はメンテナンス時にどういうふうに歯みがきをするのが良いのかアドバイスすることもできます。そしてメンテナンスでは、お口全体のお掃除以外にも、歯周病の検査、むし歯になっている歯が無いか、詰め物が劣化していないか、噛む力によって歯にヒビが入ってないか、酸蝕症になってないか、噛み合わせ・歯並びに変化はないか、などチェックします。一度治療した歯が一生持つのは理想ですが、それはまず期待できません。
長年、痛みが出ていないからなどの理由で歯科に通っていない方もたくさんいらっしゃると思いますが、むし歯がないのに歯周病が進んでいたりなどお口の中の状態は人それぞれ違うのです。そのため定期的にメンテナンスを行うことで患者さんごとに異なるリスクを探り、その情報を患者さんと共有します。そしてお口の中のトラブル回避のために日々の生活の中で実践しやすい方法を具体的にご提案することができます。
「治療した歯がすでにたくさんあるから」といって諦めてはいけません。定期的メンテナンスは中年期、高齢期、何歳からでも大丈夫ですし、何歳になっても必要です。早く始めれば始めるほど、歯を守り長く持たせることができ、その効果は高いです。今ある歯を大切に守っていきましょう。
次回のQは・・・・
「歯の詰め物が外れて飲み込んじゃった。大丈夫?」です。
歯科助手 木下 彩
2024年5月号
むし歯は歯磨きをしていればならないというわけではありません。一生懸命歯磨きしているのにむし歯が次々とできる方がいらっしゃれば、それほどしっかり歯磨きをしていないのにむし歯ができないという方もいらっしゃいます。それは、むし歯になるのは多くの要因が絡んでいるからです。歯を攻撃してむし歯を作ろうとする「リスク因子」とむし歯にならないようにする「防御因子」の力関係でむし歯になるかどうかが決まります。
まず「リスク因子」というのは、歯の脱灰。つまり歯を溶かし壊す要因のことを指します。「防御因子」というのは、歯の再石灰化。つまり歯を守る要因のことを指します。これらの要因のバランスは、常に揺れ動いています。むし歯になりにくくするには、「リスク因子」を減らし、バランスを「防御因子」に傾けることが大切です。
それでは具体的にどういった行動がこれらの要因にあたるのか説明させていただきます。
まず、「リスク因子」は・むし歯菌が多い・ダラダラ食べ・唾液量が少ない・不十分な歯みがき等が挙げられます。反対に「防御因子」は・フッ素を使っている・むし歯菌が少ない・適切な食生活・唾液量が多い・適切な歯みがき・歯科に定期受診している等が挙げられます。
「リスク因子」において・むし歯菌が多い人・不十分な歯磨きの人は、お口の中に細菌のかたまりであるプラークが多いです。毎日の適切な歯磨きにフッ素配合歯磨き剤を使い歯質を強化したり、歯ブラシ以外にデンタルフロスも使ったりとリスクを効果的に減らすことができます。適切な歯みがき方法を知りたい方は歯科医院で教えてもらってくださいね。そしてダラダラ食べは、食事の量ではなく飲食回数が多くなると、お口の中のpHがずっと下がった状態になり脱灰が起こり続けてしまいます。一般に、食事で歯が溶けてしまっても食べてない時間に歯の成分が戻ってくる再石灰化が起こって歯の健康は保たれます。従って再石灰化の時間をしっかりと確保するためにメリハリをつけて食事しましょう。また・唾液量が少ないに関しては、唾液には歯を溶かす酸を中和したり、脱灰で溶け出した歯の成分を元に戻したりする働きがあります。そのため ・良く噛んで食べる・キシリトールガムを噛む・唾液腺マッサージをすることが有効です。
日々の生活の積み重ねでむし歯ができてしまいます。歯を磨いているからと油断せず、リスク要因を減らすことで、より歯の健康は保たれます。意識して生活してみてくださいね。
次回のQは・・・・
「口の中に被せ物や詰め物がたくさんあります。すでにこんな状態だと定期的にメインテナンスを始めるには遅すぎるのでしょうか?」です。
受付 中村りこ
2024年4月号
前回では歯ぐきの深い部分の清掃についてお話させていただきましたが、今回は歯ぐきの浅い部分のセルフケアについてお話させていただきます。
まず、歯と歯の間や歯ぐきの溝の清掃用具として、おもに歯間ブラシとデンタルフロスの2種類があります。歯ブラシのみでは歯面全体の約65%のプラークしか除去できません。そして、歯と歯の間(歯間)はむし歯ができやすい部位です。そのため歯間の清掃のために歯間ブラシやデンタルフロスは健康な方でも必要なのです。
歯間の清掃が必要といっても、どれを選択してどのように使用すればいいのか知るのは難しいですよね。簡単にデンタルフロスと歯間ブラシのそれぞれの特徴を説明します。
<デンタルフロス>
歯間や歯周ポケットを効率よく清掃することができます。歯間が狭い方はデンタルフロスを選択するのがよいでしょう。
ワックス付きのフロスは滑りがよいため、はじめてフロスを使う方やフロスが引っかかりやすい方におすすめです。一方ワックス無しのフロスは、ワックス付きよりも歯面の汚れを落としやすいです。
指巻きタイプやホルダー付きのものがありますが、奥歯などフロスの使用が難しい部位には、当院でも販売しているY字のホルダー付きのものがおすすめです。
また、ブリッジの歯と歯がつながっている部分には、普通のフロスは通せないので、スーパーフロスという端が硬く糸通しのようになったフロスがあります。
<歯間ブラシ>
歯ぐきが下がり歯間が広い部分に適しています。サイズは小さい順にSSS、SS、S、M、L、LLまであります。
基本的には、軽くブラシがしなる程度に無理なく通せるサイズのものがよいでしょう。
ブラシのサイズが大きすぎるものを選んでしまうと無理に通すことになり、芯の金属のワイヤーにより短期間でも歯が削れてしまったり、歯ぐきが下がってすきっ歯になってしまうことがあります。歯や歯ぐきを傷付けないためにも、また歯間がすべて同じ大きさではないので、サイズ選びはとても注意が必要です。
そのため、当院では患者様に合ったサイズをお選びしますので、サイズが分からない方や使い方が分からない方もお気軽にお尋ねくださいね。
歯ブラシだけでなく、補助的な清掃用具も一緒に用いて健康的なお口の中を目指しましょう。
次回のQは・・・・
「むし歯になりやすい人となりにくい人には、なにか違いがあるのですか?」です。
歯科衛生士 福井万緒
2024年3月号
「口を開けるときに音が鳴る」、「口を開けるときや噛みしめた時に痛みがある」、「口を大きく開けようとしても開けられない」これらのうち1つでも症状があれば顎関節症だといえます。ですがこの3つは重症度が違い、痛みがある場合や、口が開けにくい場合はなるべく早く歯科を受診しましょう。
音が鳴るだけでしたら特に治療を必要とはしませんが、何気ない日ごろの動作が気づかないうちに「顎関節に影響する習慣」になってしまっているかもしれません。チェックしてみましょう!
うつぶせ寝や睡眠中のことはすぐに変えられることではありません。ですので、自覚しやすく、変えやすいところから変えていきましょう。意識して変えられることのひとつが「スマホ」です。しかし、スマホをやめろということではありません。スマホを見るときの姿勢の改善や、こまめに休憩することを意識して使いましょう。
もし、「顎関節症かも?」と思ったら、様子見をするのは1週間ほどにして、すみやかに歯科医院を受診しましょう。
次回のQは・・・・
「歯間ブラシとデンタルフロスって、どっちでもいいの?」です。
歯科衛生士 長船瑞稀
2024年2月号
奥歯を失うとしっかりものが嚙めなくなり、咀嚼能力が低下します。咀嚼能力が低下すると食べにくくなるものの代表格が「肉と野菜」です。たとえば、最近うどんやラーメンなどの麺類や、カレーライスばかり食べていませんか?このような食事は、カロリーオーバーになりやすい反面タンパク質やミネラル、ビタミン、食物繊維などが少なく、深刻な栄養不足を引き起こしやすいのです。奥歯がなくなるということは、食べ物がしっかり噛むことができないので食事がしにくくなりその結果やせて、ダイエットになるかと思いきや、肥満につながりやすいうえ、低タンパク質で筋肉が減ってしまうので健康のためには逆効果です。
上記のような食事をしていて、実際に痩せた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、もしかしたらタンパク質不足で体の筋肉量が減って「サルコペニア」になっているのかもしれません。サルコペニアとは、加齢によって生じる筋肉量・筋力の低下のことで、高齢者の体力や運動機能を急激に低下させ、つまづきや転倒の原因として問題視されています。
これら3つのうち1つでもできないものがあれば、サルコペニアの可能性があります。サルコペニアは、肥満ぎみの方も痩せ型の方も関係なく陥る状態ですので、もし今奥歯がなくて、柔らかい手軽なお食事ばかりの方は一度チェックしてみてください。
摂取したタンパク質を使って効率よく筋肉量を維持するには、野菜に豊富に含まれるビタミンやミネラルも欠かせません。例えばビタミンEは筋肉増強効果を、ビタミンB6は筋肉の分解と合成を、マグネシウムはタンパク質の代謝を促進するという重要な役割を担います。サルコペニアにならないためにも、歯科治療で肉や野菜もしっかり噛めるお口を取り戻し、健康なからだにしていきましょう!ただし食べすぎには注意してくださいね。
次回のQは・・・・
「顎関節症は生活習慣と関係があるって本当?」です。
歯科衛生士 長船瑞稀
2024年1月号
ものを噛むと自然に口の中に唾液があふれてきます。そこでは唾液そのもののチカラと噛むという行為が全身におよぼす効果により、我々の健康は支えられています。前回(2023 8月号)では唾液のもつチカラについてお話させていただきましたが、今回は噛むという行為が全身におよぼす効果についてお話しします。
長時間ガムを嚙むと、顎の筋肉の筋トレをしているようなものなので、顎関節や顎筋に痛みが出る恐れがあります。片方ばかりで噛んでいるとそちら側の筋肉が太くなり顔が歪んでみえることもあります。
歯に詰め物や被せ物があり、過度な力を入れて噛んでいるとそれらが壊れてしまうときがあります。またそれらがガムにくっついて取れることもあります。
次回のQは・・・・
「奥歯がなくなると太るって本当?」です。
院長
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